いよいよ開幕したサッカーW杯ロシア大会。
プレー以外で注目されているのは、「最凶」といわれるロシアのサッカー・フーリガンです。
他国のフーリガンに比べても戦闘力が凄いばかりでなく、ロシアの右翼政治家の支援を受けていると言われています。なんと、あのプーチン大統領も・・・。
W杯がロシア・サッカー界の暗部を世界にさらす場とならなければ良いのですが。
英国フーリガンはロシア渡航が禁止に
ヨーロッパのフーリガンといえば、イングランドが本家となります。
1980年代に、100人近い死傷者を出した事件が相次いだこともあって、警備・取締が強化され、その動きは沈静化したと見られてきました。
ただ、今回のロシアW杯の前哨戦となるヨーロッパ選手権では、イングランドのファンが隣国フランスに大挙しておしかけ、「イングランド・フーリガンの復活」と報じられました。
そこで、今回のロシア大会に際し、イギリス政府は、暴力行為など過去に問題行動を起こしたフーリガン1,200人以上のロシア渡航を禁止したと明らかにしました。
「さすがはサッカーの母国、適切な対応だ」と感心しましたが、どうやら別のところにその目的はあるようです。
というのは、英国のフーリガンたちは、2016年のヨーロッパ選手権のリベンジに燃えていたからというのです。
2016年ヨーロッパ選手権の惨劇
今回のロシアW杯の前哨戦となったヨーロッパ選手権では、イングランド・フーリガンが大挙してフランスに押しかけました。
マルセイユでは、数百人がビールとワインで酔っ払い、気勢を上げて応援歌を大声でがなり立て、傍若無人に振舞っていました。この日は、イングランドとロシアの試合が予定されていました。
そこへ、100人余りのロシア人が突如、殴り込みをかけました。泥酔してフラフラしているイングランド側に対し、整然と隊列を組んで突撃し、映画のアクション・シーンのようにイングランド・フーリガンをなぎ倒していきました。
その光景を見ていた人は「どこかの国の特殊部隊かと思った」というほど、ロシア・フーリガンの戦闘力は凄かったといいます。
イングランド側は行き場もなく逃げ惑い、2人が意識不明の重体に陥りました。
この時のことを今もなお根に持ち、「ロシアに行ってリベンジしてやる」とSNSなどで宣言するフーリガンが相次いだことから、ロシアでのフーリガンどうしの衝突を恐れたイギリス政府が渡航禁止にしたというのが真相のようです。
ロシア・フーリガンは最凶
ロシア人のフーリガンは、「フィルマ(会社)」と呼ばれるクラブチームの私設応援団。ソ連邦が崩壊した1990年代に急速に勢力を伸ばしました。
ロシア国内リーグのチームすべてに存在し、「スパルタク」(日本がセネガル戦を行うスタジアムをホームとする)、本田圭佑選手が所属した「チェスカ」や「ディナモ」など、ヨーロッパのサッカー界に名を知られる強豪チームは、いずれも強力なフーリガン組織を有しています。
2017年、イギリスBBCは、ロシア人フーリガンの訓練風景を番組で流しています。まだ幼さの残る青年が軍隊顔負けの猛烈な訓練を受け、キックボクシングや総合格闘技をマスターしていきます。
なかでも、森の中で行われる実戦トレーニングは、2人1組になっての殴り合い、蹴り合いです。以前、日本で流行した『PRIDE』が森の中の広場で繰り広げられるのですから、異様な光景です。
「必ず素手で殴る」ことがルールとされ、他チームのフーリガン組織とど派手な闘争を繰り広げますが、一般のファンには絶対に手出しはしないといいます。
さらに、普段はいがみあっている各チームのフーリガン組織も、W杯のような国別対抗戦となると「一致団結」し、他国に敵意をむき出しに向かっていきます。
フーリガンの背後に政治家
ロシア・フーリガンとイングンランド・フーリガンの最大の違いは、ロシア・フーリガンには背後に政治家がいることです。
ロシア・フーリガンに高邁な政治思想などありません。ただ、概して、右翼的・国粋主義的です。
組織のシンボルマーク、スローガン、おそろいの戦闘服やTシャツ、トレーナーなどには、ナチスを思わせるものが多いのも特徴です。
そういう彼らは、プーチン大統領が唱える「大国ロシア」「強いロシア」のフレーズに惹きつけられ、ロシアの与党「統一ロシア」の熱烈な支持者と化していくのも必然かもしれません。
広大な国土を持つロシアでは、アウェイの地に応援に行くだけでも莫大な費用がかかります。しかし、このフーリガン組織の旅費は、政治家が肩代わりしていることが知られています。飛行機や列車は上等の席が用意されることまであるといいます。
フーリガンと政治家との関係が密になっていくにつれて、フーリガンたちは自然と政治家の親衛隊のように振る舞うようになります。
集会などでの護衛はもちろん、反体制派の活動の妨害・弾圧にまで動員されているといわれています。特に、与党「統一ロシア」の政治家にとって、忠誠心が高く戦闘力もある彼らは利用価値があるというわけです。
プーチン大統領が黙認
ロシア下院の副議長でもある有力議員のイゴール・レベデフ氏は、フーリガン行為を明文化されたスポーツとみなすべきだと主張し、暴力行為を働くファンを「本気のサポーター」と表現するほど肩入れしています。
一方、大ボスのプーチン大統領は、フーリガン対策を強化すると述べています。レベデフ氏のように、肩入れしていることを臭わせる発言はしたことはありません。
ただ、フーリガンたちから熱烈に支援されていること、与党議員らと密接な関係にあることについて、何のコメントも発したことはありません。まったく意に介していないようでもあります。
フーリガンの最大組織のリーダー格の人物は、プーチン大統領とのツーショット写真を数種類、ネット上に公開しています。スパイ組織の出身で何かと用心深いプーチン大統領が、どこの馬の骨だかわからない者と一緒に写真を撮ることなどありえるはずもなく、かなり親密な関係だということがよくわかります。
つまり、プーチン大統領は立場上、公にたたえることはしないものの、その親密な関係を否定することもないため、フーリガンを黙認していると受け止められています。
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おわりに
ロシア政府は、主要なフーリガン組織のリーダーを頻繁に呼び出し(政府がメンバーを把握している証拠!)、W杯大会期間中には騒ぎを起こさないよう厳重に警告していると報じられています。
W杯はサッカーの祭典。ピッチ上の激闘は大歓迎ですが、観客席やスタジアム外での激闘・乱闘はW杯の名を汚してしまいます。
以上、『【サッカーW杯ロシア大会】プーチン大統領が黙認する「最凶フーリガン」』でした。