日本にUFO襲来! 憲法上、自衛隊にできることとは?

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日本の自衛隊が、実際に武器を使用して戦うには、憲法上の多くの制約があることが知られています。

 

でも、映画『ゴジラ』では、当然のように日本の自衛隊は戦っていました。UFO襲来をテーマとした映画『インディペンデンス・デイ』でも自衛隊は戦っています。しかし、どちらも自衛隊が戦う法的根拠は示されていません(当り前か)。

 

そもそも、こういった想定外の事態に、憲法上、自衛隊は何ができるのでしょうか?

 

 

日本政府はUFO襲来を検討せず

まず、前提として、日本政府は未確認飛行物体(UFO)について、「政府としては存在を確認したことはない」とする答弁書を閣議決定しています。

 

UFOが日本に飛来した場合の対応についても、「特段の検討を行っていない」としています。

 

この問題は、2007年にも提起され、時の福田康夫内閣は、「『地球外から飛来してきたと思われる未確認飛行物体』の存在を確認していない」とし、日本政府として初めて公式にUFOの存在を否定しています。

 

ただ、福田内閣の町村官房長官は「個人的には絶対いると思う」と述べています。

 

でも、「確認したことがない」から「未確認飛行物体」と言うのだと思うのですが。

 

 

自衛隊武力行使の3要件

日本国憲法第9条の下で、自衛隊が出動し、武力行使が認められるのは、次に3つの要件(武力行使の3要件)を満たした場合にのみ許されています。

 

  1. わが国に対する武力攻撃が発生したこと、またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること
  2. これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと
  3. 必要最小限度の実力行使にとどまること

 

そして、自衛隊法76条で、首相はわが国に対する「外部からの武力攻撃」が発生した事態や、武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至った事態に対して、自衛隊の出動(防衛出動)を命じると規定しています。

 

「外部からの武力攻撃」とは、国または国に準じる組織が、何らかの意図を持って、日本に対して組織的・計画的な武力攻撃を行うことと定めています。

 

 

ゴジラの襲撃

UFOの前に、ゴジラが襲撃した際について考えてみます。

 

映画『シン・ゴジラ』では、ゴジラの襲撃に対して自衛隊は防衛出動を行っています。

 

これは、法的にはありえません。

 

ゴジラがいかに圧倒的な破壊力を持っていようとも、あくまで突然変異的に生まれた生物です。ゴジラが「国または国に準じる組織」ではない以上、ゴジラの攻撃は「外部からの武力攻撃」にはあたりません。

 

また、「何らかの意図」を持っているのかどうかは定かではありません。さらに、「組織的・計画的」でもありません。

 

これでは、防衛出動の条件がクリアされないということになります。したがって、法的には、害獣駆除を目的とした災害派遣で対処するのが妥当ということになります。

 

つまり、クマが街に現れて被害を与えているとして自衛隊が駆除に向かう(これを総称して災害派遣といいます)のと同じです。

 

災害派遣での自衛隊の武器使用については、詳細は規定されていませんが、防衛出動と比較して劣ることは否定できません。ただ、1974年に大型タンカーが火災を起こした際、災害派遣で出動した自衛隊がタンカーを爆撃し、処分したことがあります。

 

破壊力のあるゴジラが出現したら、自衛隊が災害派遣され、重火器を用いた大規模な「害獣駆除」がなされるということになるでしょう。

  

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UFOの襲来

・UFOの襲来

まず、「UFOの襲来」を、「エイリアン(地球外生命体)が操作する飛行物体が、日本の領空または領土に飛来または着地した状態」と定義してみます。

 

明らかに領空侵犯ですから、外国の航空機に対するのと同様に、航空自衛隊が出動し、日本の領空外への退去を命じます。

 

退去命令に応じない場合には、威嚇射撃を行い、最終的には撃墜することになります。

 

しかし、どのような方法でエイリアンに退去命令を発するのでしょうか?

 

・UFOからの武力攻撃

UFOから日本に向けて武力攻撃が行われ、都市が破壊されていると仮定します。

 

まず、エイリアンは地球外生命体ですから、「国または国に準じる組織」にはあたりません。「何らかの意図」を持っているかどうかは、確認は不可能でしょう。

 

また、襲来したUFOが1機のみだった場合は、「組織的・計画的」攻撃にもあてはまりにくくなります。

 

都市が破壊されているのですから、「武力行使の3要件」は十分に満たされています。ただ、首相が自衛隊に防衛出動を命じる法的条件を十分にクリアーできないのです。

 

 *本稿を書く際に参考にしました↓

防衛ハンドブック2019

防衛ハンドブック2019

 

 

まとめ

UFO襲来やゴジラなどの巨大生物の襲撃にどう対応するかは、実は、古くて新しい問題です。

 

安全保障論を専攻する学生らにとって、基本的な応用問題(?)。格好の「頭の体操」です。

 

公式見解というものを、どこの国も定めていないので、正解は決まっていません。

 

個人的に、ゴジラの場合は、「害獣駆除を目的とした災害派遣で自衛隊が出動する」が正解だと思っています。

 

UFOの場合も、ゴジラと同様の対応によって防衛出動並みの災害派遣をするしか方法はないかと思っています。防衛法制の抜け落ちた点であることは確かです。

 

ゴジラの出現は、現実に起こりうるとは想定できないものの、UFO・エイリアンは「存在しない」と証明することはできない以上、少しは検討の俎上にあげてみてもいいのではないでしょうか。

 

こんなこと言ったら、もっと他に大事なことがあると怒られますかね。

 

以上、『日本にUFO襲来! 憲法上、自衛隊に出来ることとは?』でした。