会社帰りの居酒屋で気の合う仲間同士で飲んでいると、決まって、阪神ファンの私と巨人ファンのP君とで熱い野球談義となります。
話題は広島の丸を獲得した巨人のFA補強。
「札束で勝利を買おうとしている」と詰め寄る私に対し、「それに罪悪感を感じていたら応援できなくなる」とP君は開き直っていました。
巨人の50億円補強
丸には5年30億円超とも総額35億円とも伝えられる球団史上最高の大型契約を提示した。すでにFAで獲得が決まっている炭谷には3年総額6億円。オリックスから自由契約となった中島には年俸だけで1億5000万円だ。新助っ人のビヤヌエバにも同2億2000万円。この2人には年俸以外にも契約金などが発生する。これまでに獲得が決まった補強組だけで、ざっと50億円規模にのぼる。
さらに山口オーナーが数日前に「補強はまだまだ半ば。十分戦力を確保したと言える状況ではない」と話しているように、今後は抑え候補となる外国人投手、日本球界復帰の可能性が高い岩隈の調査も継続する。補強の費用は総額で50億円から60億円規模にまで膨らむ可能性もある。(『日刊ゲンダイ』より転載)
ここ数年の巨人は若手の育成に力を入れていた印象がありましたが、この秋は、湯水のごとく金を使った過去を思い起こさせる「金満」ぶりです。
何せ、50億円です。小規模の自治体の年間予算より多いのです。これで強くなるのかは別にして、とにかくがむしゃらに選手を獲りにいくということでしょう。
開き直る巨人ファン
「強くなるかは別」と書きましたが、あの丸が入るのですから巨人は強くなるでしょう。そこで阪神ファンとしては詰め寄りたくなります。
私「巨人は札束で勝ちを買っている」
P君「そこに罪悪感を感じていたら応援できなくなる。ファンでいられなくなる」
巨人ファンも巨人の巨額補強に少しは後ろめたさを感じているのかと思いつつも、見事な開き直りに感心さえしました。
私「原監督が欲しいと言う選手をみんな獲りにいってる感じで、戦略がない」
P君「獲れる選手はすべて獲る。すべて獲り終えた後、戦略を考える」
これまた見事な開き直りです。言うならば、子ども時代に近所の広場で野球をやろうとなった時に、そこに集まっているメンバーの中からガキ大将的存在の子が「お前はサード」「お前はライト」と指名しているようなものだと私が極論を言うと、P君は「それが野球の原点だ」と薄笑い。もはや返す言葉がありません。
かつての王・長嶋、時代は下がって原・江川・桑田・松井ら生え抜きのスター選手の誕生を望みながら、一方で「常勝巨人」を義務づけられながらも4年連続で優勝を逃している現実との狭間に、巨人ファンも開き直るしか仕方ないのもしれません。
FAとチームづくり
1993年から導入されたFA制度。この間、FA権を行使して入団・退団した選手の数は以下の通りです。
FAで入団したチーム別選手数
①巨人 26人
②ソフトバンク 13人
③阪神 11人
④DeNA 9人
⑤中日 7人
⑥オリックス 6人
⑦ヤクルト・楽天・西武・ロッテ 3人
⑪日本ハム 2人
⑫広島 0人
FAで退団したチーム別選手数
① 西武 18人
②オリックス・ソフトバンク 11人
⑤阪神 10人
⑥広島・中日・DeNA 9人
⑨巨人・ヤクルト 8人
⑪ロッテ 7人
⑫楽天 3人
やはり、です。FA制度の活用度という観点でみれば、巨人はダントツです。つまり、巨人はFA制度を中心にして補強で戦力を整備するチームづくりを行っているということです。
良いも悪いもありません。「勝ってナンボ」のプロの世界です。巨人はそういうチームなのだということです。
一方で、広島を見て下さい。FAで退団した選手が9人いるのに、FAで獲得した選手はゼロです。球団の方針として、FAによる選手の獲得はしないとの方針を貫いています。
入団した選手を徹底的に鍛え上げて、一流に育て上げ、生え抜き選手でチームを編成するという姿勢は一貫しています。
そして、我が阪神タイガースのように、生え抜きの育成と補強との間でぶれまくっているチームもあります。
つまり、巨人も広島も阪神も、それぞれが個性ということです。チームづくりに正解はありません。ましてや、良い悪いもありません。
巨人ファンは開き直ってでも応援するのです。広島ファンは生え抜きだけで優勝することに酔いしれるのです。ぶれていると怒りながらも阪神を応援するのです。それがプロ野球ではないでしょうか。
10年後の巨人
私「おい、このままずっと巨人は補強し続けるのか」
P君「当り前だ」
私「だったら10年後の巨人はどうなるんだ?」
P君「日本ハムの清宮も、大阪桐蔭の根尾も藤原も、そして大谷翔平も巨人にいる」
私「上等だ。だったら阪神は今年の金足農業高校になってやる!」
以上、『巨人の巨額FA補強に「罪悪感を感じたら応援できない」と開き直る巨人ファン』でした。