何でもあり?「北方領土」解散で衆参ダブル選挙が浮上!

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元外務相主席分析官の佐藤優氏が、安倍首相が北方領土の問題を争点に衆議院を解散し、2019年夏の参議院議員選挙とのダブル選挙を目論んでいると主張しています。

 

北方領土問題についての日本の従来の立場は四島(歯舞・色丹・国後・択捉)の返還でしたが、二島(歯舞・色丹)返還でロシアと手を打ち、その是非を選挙で問うとのことです。

 

 

佐藤優氏とは?

佐藤 優(さとう・まさる):作家、元外務省主任分析官。1960年東京都生まれ。同志社大学大学院神学研究科修了。1985年外務省入省。在ロシア連邦日本国大使館勤務など、対ロシア外交の最前線で情報収集・分析のエキスパートとして活躍。主な著書に『国家の罠–外務省のラスプーチンと呼ばれて』(毎日出版文化賞特別賞)『自壊する帝国』(新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞)など。最新刊は『十五の夏』。

 経歴にもあるように、佐藤優氏はテレビのワイドショー番組で政界の裏話などを嬉々として語る政治評論家の類ではありません。

 

専門のロシアを中心に世界情勢を分析する外交のプロ中のプロです。特に、北方領土問題については、外務省在籍中に自らが手がけたこともあって、細部にいたるまで把握しています。

 

その佐藤氏が、北方領土問題を争点に衆院解散、衆参ダブル選挙というのですから穏やかではありません。

 

以下、『BUISINESS INSIDER』の記事に従って紹介していきます。

www.businessinsider.jp

 

 

北方領土問題の日本政府の立場

現在、日本とロシアとは、国際法的には戦争状態が続いています。戦争状態を終結させるためには平和条約を結ぶ必要がありますが、今日にいたるまで結ばれていません。

 

平和条約締結に向けての協議は、戦後一貫して行われてきましたが、日ロ(ソ連邦時代を含む)双方の政府・議会が合意したのは1956年の「日ソ共同宣言」です。

 

「日ソ共同宣言」には、平和条約を締結した後、(当時のソ連邦は)歯舞・色丹の二島を日本に返還すると書かれてあります。

 

日本の要求は歯舞・色丹の二島に加えて、国後・択捉を含めた四島の返還です。当時の日本政府は、平和条約を締結し、歯舞・色丹の二島が返還された後も、国後・択捉がどちらに帰属するのかの協議が行えると理解していました。

 

しかしながら、ロシア側は国後・択捉の帰属の問題などは協議されることはないとしており、今もその認識は対立したままです。

 

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そうした認識の対立もあって東西冷戦の最中は、四島即時一括返還を主張していましたが、1993年に当時の細川護煕首相とエリツィン大統領が、四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するとした「日露関係に関する東京宣言」に署名しました。

 

これは、四島が日露いずれに属するのかを決めた後、平和条約を結ぼうというもの。つまり、日本4(島)ロシア0(島)、日本3ロシア1、日本2ロシア2、日本1ロシア3、日本0ロシア4という5通りの解決策があることになります。

 

もちろん、日本側は「日本4ロシア0」という解決策で決まると踏み、ロシア側は「日本0ロシア4」ないし「日本2ロシア2」で決まると踏んで、合意しているわけです。

 

繰り返しますが、日本政府の立ち場は、四島がどちらの領土なのかを決めた後、平和条約を締結するというものです。そして、最終目標は、あくまでも四島の返還です。

 

 

日本政府の政策転換

今年(2018年)9月、プーチン大統領は安倍首相に対して、「一切の前提条件を抜きにして2018年末までに日露間で平和条約を締結しよう」と呼びかけました。

 

これは、佐藤氏の解説だと、「ごちゃごちゃ言ってないで、『日ソ共同宣言』の通りにやろうぜ」ということのようです。

 

つまり、日本側が歯舞・色丹の二島の返還で我慢するのなら、明日にでも平和条約が締結できるではないか、ということです。

 

どうやら安倍首相はこのプーチンの呼びかけに応じるようです。なぜなのか?

 

安倍首相は憲法改正を声高に主張し続けています。それは歴史に名を残したいからだと解説されます。

 

憲法改正は一度実現されれば、その後はハードルが下がって何度も改正されることは諸外国の例からも明らかです。何十年か先のテレビのクイズ番組で「憲法が改正された時の首相を5人答えよ」との問題が出されるようでは、安倍首相のプライドが許さないでしょう。

 

しかし、例え二島の返還にとどまっても、北方領土問題の解決となれば、サンフランシスコ平和条約を結んだ吉田茂、沖縄返還を成し遂げた佐藤栄作に続いて、安倍晋三の名は50年後の歴史の教科書にも確実に残ることになります。

 

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要は、歴史に名を刻むには、北方領土問題しかないと安倍首相が思い込んでいるいうのが佐藤氏の解説です。

 

 

衆参ダブル選挙の理由

二島返還で解決をはかるということは、これまでの四島返還という選択肢を完全に捨てることになります。

 

四島の一括返還は安倍政権を支持する保守層に根強く主張されています。だからこそ、この政策の大転換について国民の信を問う、というわけです。

 

また、共産党は千島列島12島返還を主張していますので、こんな非現実的なことを言う政党が加わる野党では北方領土問題は未来永劫にわたって解決しない、と訴えることも可能となります。

 

衆院解散のタイミングとしては、2019年10月に消費税率が10%に引上げられた後は景気が冷え込みますので、それ以降はありえません。

 

2019年10月より前だと、同年4月末に天皇陛下の退位、5月は新天皇の即位となりますので、6月から10月までがしかチャンスはなくなります。

 

しかし、その間の7月に参議院議員選挙が行われます。参院選の前後に衆院選を連続でやるわけにもいかないので、残る選択肢は衆参ダブル選挙だけというわけです。

 

今年9月の沖縄知事選挙で、自民・公明の与党が総力戦で応援した候補が、野党系候補の玉城デニー氏に8万票もの大差で敗れています。野党が共闘すれば、2019年夏の参院選はかなりの苦戦が予想され、もし負けるようなことがあれば、安倍首相が歴史に残す者は何もなくなってしまいます。

 

自民党政権は過去に2回、衆参ダブル選挙を行い、2回とも衆参ともに圧勝しています。こうした成功体験も後押ししているのかもしれません。

 参考文献↓↓

日露外交 北方領土とインテリジェンス (角川新書)

日露外交 北方領土とインテリジェンス (角川新書)

 

 

 

おわりに

佐藤優氏の主張は、ストーリーとしてはあり得ない話ではないと思いました。衆院選は2018年10月にやったばかりで、ようやく1年がたったばかりです。常識的にはありえないのですが・・・。

 

政治家として歴史に名を残したいという思いを持つことは理解できます。逆に、それくらいの意気込みで仕事をしてもらわないと困ります。

 

ただ、実際に、歴史に名を残したかどうかは後の世の国民が決めること。名を残すことが目的となってしまっては、もはや「何でもあり」の政治になってしまいます。

 

以上、『何でもあり?「北方領土」解散で衆参ダブル選挙が浮上!』でした。