ゴーン容疑者のいる東京拘置所が、仏メディアに「地獄」と映った理由

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金融商品取引法違反の疑いで逮捕され、東京拘置所に勾留されている前日産会長のカルロス・ゴーン容疑者。

 

世界的に有名な経営者のゴーン容疑者が拘束されている環境に対し、フランスのメディアが注目しています。

 

なかでも、仏紙『フィガロ』は「地獄だ」と伝えていますが、ゴーン容疑者のいる東京拘置所はそんなにヒドイのかというと、一般の容疑者と同様の扱いを受けているにすぎないようです。

 

それでは、なぜ、仏メディアに「地獄」と映るのでしょうか?

  

 

仏メディアが「地獄」と称する

金融商品取引法違反の罪に問われ、東京拘置所に勾留されているカルロス・ゴーン容疑者の拘留環境について、フランスのメディアが「ひどい刑務所だ」と伝えています。

 

以下、朝日新聞の記事を引用します。

 

仏紙フィガロは「まだルノー、日産、三菱の会長だったのに、ひどい拘置所に移された」と報じた。この拘置所には死刑を執行する施設があるとして、「地獄だ」と伝えた。

さらに「検察の取り調べの際に弁護士も付き添えない。外部との面会は1日15分に制限され、しかも看守が付き添い、看守がわかる言葉(日本語)で話さなければならない」と指摘し、「ゴーン容疑者の悲嘆ぶりが想像できるというものだ」と報じている。 

 

 

ゴーン容疑者の東京拘置所での生活

まず、東京拘置所に入る前に「新入調室(しんにゅうしらべしつ)」に入って検査を受けます。いわゆる身体検査です。

 

全裸にさせられ、脇の下、口の中、肛門まで丹念に調べられます。これは金属片や薬などを隠し持っていないかのチェックですが、肛門を調べられる時は一般の者でも耐えがたいもののようで、ゴーン容疑者のようなセレブ生活を送っていた人には耐えがたい屈辱だったでしょう。

 

ネクタイ、ベルトは取り上げられます。これは自殺防止のためだということです。

 

ゴーン容疑者のような著名人は、3畳ほどの広さの「単独室」(1人部屋)に入っているとみられます。ロッキード事件で逮捕された田中角栄元首相も「単独室」でした。

 

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東京拘置所の「単独室」 朝日新聞デジタルより転載

 

この部屋には暖房器具はなく、冬場はかなり冷え込むようです。東京拘置所に収監されたことがある実業家の堀江貴文氏は「この時期の東京拘置所は結構寒いからなあ」「座布団でも差し入れてみるか」と自身のツィッターで”同情”しています。

 

午前7時起床、午後9時就寝。畳の上を素足で過ごします。外国人であるゴーン容疑者に配慮して、室内にベッドが持ち込まれているかもしれませんが、ベッドメイキングは自らが行わないといけません。

 

トイレも洗面も食事も同じ部屋で行います。食事は和食が基本ですが、外国人の場合は麦飯の代わりにパンが出されることもあるようです。お金を差し入れてもらうことは可能ですが、食べ物は拘置所内の売店で買ったものだけが許されます。ゴーン容疑者の大好物の高級焼き鳥の差し入れは許されません。

 

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東京拘置所での食事

 

服装はジャージが多く、ヒモがついているパーカーなどは認められません(自殺防止のため)。

 

日中は検察の取り調べ以外は、差し入れてもらった本を読むことしかない暮らしとなります。

 

こうした拘置所での生活は、プライベートジェットで世界を飛び周り、最高のセレブの生活を送ってきたゴーン容疑者にとっては、これまで経験してこなかった屈辱を味わっていることは確かでしょう。

 

仏メディアには「地獄」と映る理由

ゴーン容疑者の東京拘置所での生活は、他の容疑者とまったく同じです。汚職で逮捕された大物政治家も、先述した堀江貴文氏のような著名人も、みなが同じ扱いです。

 

これは当然のことで、容疑者の扱いは法令で定められているからです。

 

生活ぶりも日常生活と比較すれば厳しいものですが、フランスでも程度の差こそあれ、似たようなものだと思います。それなのに、なぜ、フランスのメディアには「地獄」と映るのでしょうか。

 

1つには東京拘置所の性質によるものです。東京拘置所は、ゴーン容疑者のような刑事裁判の判決が確定していない未決拘禁者と死刑囚が収容されています。死刑が執行されるのもここです。

 

フランスでは40年ほど前に死刑制度は廃止されています。死刑執行という野蛮な行為が行われる場所と同じところに拘束されていることそのものが、「地獄」と映るのだと思われます。

 

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さらに、制度の違いがあげられます。フランスでは検察の取り調べに際し、弁護士の同席が許されますが、日本では許されません。拘束期間も、フランスではテロの容疑者を除くと最長4日間であるのに対し、日本は20日間となっています(再逮捕となればさらに20日間)。

 

こうした制度の違いから、ゴーン容疑者の環境が特別に厳しいと感じられ、「地獄」と映ったようです。仏紙『ルポワン』の「日本の司法システムはフランスでは考えられない。ゴーン氏をフランスに帰還させなくてはいけない」との記事が、そのことをよく物語っています。

 

 

おわりに

フランスは、サルコジ元大統領が2014年に拘束された際は、わずか1日で身柄が解放されているお国柄でもあります。ゴーン容疑者が別件で再逮捕され、さらに20日間の拘留となれば、さらにフランスメディアは「最大最悪の地獄」と騒ぎ立てるかもしれません。

 

一方、フランスは「自由・平等・博愛」の精神で革命を成し遂げた国でもあります。どのような著名人であっても、特別扱いを一切行わない「平等ぶり」に関心が集まってくるかもしれません。

 

ゴーン容疑者の扱いをめぐるフランスメディアの報道ぶりに注目です。

 

以上、『ゴーン容疑者のいる東京拘置所が、仏メディアに「地獄」と映った理由』でした。