今回は、IWGPヘビー級選手権試合「王者・オカダカズチカvs挑戦者・ケニーオメガ」の一戦です。
王者のオカダが挑戦者にケニー・オメガを指名し、両者の希望によって、時間無制限3本勝負で行われました。
IWGPヘビー級選手権試合 時間無制限3本勝負
王者・オカダカズチカvs挑戦者・ケニーオメガ
《1本目》
オカダとオメガのシングルマッチは1勝1敗1分の全くの五分。両者の希望によってIWGP史上初の時間無制限3本勝負で行われました。
ビッグマッチで3本勝負となるのは、いつ以来でしょうか。今の若いファンにとっては、とても新鮮に感じたかもしれません。
私のようなオールドファンにとっては、3本勝負が当り前でした。1970年代には金曜夜8時のゴールデンタイムに放送されていたこともあって、スーパースターのアントニオ猪木や坂口征二を長い時間映し出す必要性があったからかもしれません。
1970年代後半から1980年代は、藤波やタイガーマスクらジュニアの選手が台頭し、セミにジュニア、メインにヘビーとすみ分けがなされました。生中継だった放送時間内にメインまでを終わらせるには1本勝負でいくしかなかったのでしょう。以降、日本のマット界は1本勝負が主流となっていきました。
3本勝負の戦い方としては、フィニッシュ・ホールドは最後まで温存し、1本目をいかに他の技で取るかだといわれてきました。アントニオ猪木がNWF王座の防衛戦を行っていた頃は、1本目はジャパニーズ・レッグホールドなどの固め技かコブラツイストで取り、2本目を卍固めやバックドロップ、ジャーマンスープレックスで仕留めていたものです。
オカダとオメガに3本勝負の経験がどれだけあるのかわかりません。試合前、オメガは「最初のフォールをいつ、どっちが取れるか」だと言い、オカダは「1本取るのに60分かかったら、どちらもフラフラ。1本目を早いうちに取りたい」と話していました。
どんな技でフィニッシュするかよりも、いかに早く1本取るかに主眼が置かれています。3本勝負も現代風の戦い方があるということでしょう。
さて、試合です。放送ではいきなり、オカダの場外へのトペから始まりましたが、その後はオメガが一方的に攻め立てます。すでに「引き出し全開」という感じ。
オカダも打点の高いドロップキックでいつものように流れを変えます。早くもレインメーカーを狙うもののかわされ、逆にレインメーカー式Vトリガーを食らいます。
オメガはすかさず丸め込みに入ろうとしたところを、オカダがパワーで押しつぶして、そのままフォール。カウント3が入り、オカダが1本を先取します。
レインメーカーをすでに繰り出したものの、固め技でフォールするあたりは猪木流といえなくもありません。
《2本目》
オメガは「終わったな。2回連続で取るにはどうすればいいんだ?」との思いがよぎったと言います。セコンドについていた盟友の飯伏幸太から「終わりじゃないから集中力を保つように」とアドバイスされたとも言っています。
速攻勝負を狙うオカダは猛然とラッシュをかけます。ただ、再び狙ったレインメーカーが裏投げでかわされます。これはもの凄い破壊力でした。実際、これ以降のオカダの動きは目立って鈍くなりました。
オメガはさらにオカダばりの高打点ドロップキック、リバースのタイガードライバーとラッシュ。そして、動きの止まったオカダを抱え上げ、「片翼の天使」でフィニッシュ。1-1のイーブンに持ち込みました。
ゴールデンタイムに放送していた頃の解説者の櫻井康夫氏ならおそらく、「オメガは最大の決め技の「片翼の天使」を使ってしまいましたので、3本目は苦しくなりますね」と言うに違いありません。
《3本目》
2本目が終わった時点で47分が経過。インターバル中のオカダの目はうつろになっているなど、両者とも体力の限界に来ているのは明らかでした。実際、オカダがロープにふっても、オメガはロープまで走れないほどです。
それでも、オメガはAJ・スタイルズの得意技スタイルズ・クラッシュを繰り出します。カウント2.9で跳ね返したオカダ。オメガの最大の勝機に、セコンドの飯伏がエプロンに駆け上がって激を飛ばします。その姿をオカダのセコンドの外道が苦々しい表情で見ているシーンは面白かったです。
オカダも王者としての意地を見せます。ショートレンジからのレインメーカー2連発が決まり、3発目を狙うもののジャーマンスープレックスでかわされます。この攻防が2回も続いていきます。
オメガは最後の力を振り絞ってレインメーカーを捕まえて「片翼の天使」で返し、Vトリガーから再び「片翼の天使」へとつないでトドメを刺しました。
2本目、3本目と連続して同じ技で決まりました。解説の櫻井氏は何と言うのでしょうか。最大の必殺技は最後の最後に見せるのが昭和プロレスの極意なら、必殺技を何度でも繰り出して、その威力を見せつけるのが現代風と言えるのかもしれません。
IWGP史上最長の合計64分を戦い抜き、2年間も王座に君臨したオカダ超えを果たしたオメガ。
カナダで10代の頃に草プロレスのバックヤードレスリングを始め、インディー団体を渡り歩いて腕を磨いてきました。憧れだった日本に来て10年で数々の栄冠を手にし、「最終最後の目標」だったのがIWGPヘビー級王座でした。
飯伏やヤング・バックスと抱き合って喜んだ後、マイクを握ります。
地球上で最高のプロレスラーを倒した。オカダ、君こそがこの団体をここまで大きくした。問題なのはそれが国内規模だったということ。
この試合中にプロレスの未来を見ました。だから、新日本のリーダーで、新日本のチャンピョンで、次のステップ、前に進みたいと思っています。
この後、バレットクラブで内部抗争を続けているCodyが登場。無言で去りましたが、挑戦を要求しているのは明らかでした。
以上、『『ワールドプロレスリング』観戦記 2018年6月28日放送 IWGPヘビー級選手権試合 王者・オカダカズチカvs挑戦者・ケニーオメガ』でした。