サウジアラビアは、トルコ・イスタンブールの領事館でサウジ人記者が殺害されたと公式に認めました。
サウジの検察当局が予備調査の結果を公表して明らかとなりましたが、この要旨たるや、まるで子どもの喧嘩の反省文。ツッコミどころ満載です。
これで事件の幕引きを図ろうとしているようですが、一方で、事件の実行犯の”口封じ”が始まっているようです。
サウジアラビア 記者殺害を認める
サウジアラビアの検察当局は、トルコ・イスタンブールにあるサウジ領事館で行方不明になっていたサウジ人記者ジャマル・カショギ氏が死亡したことを初めて公式に認めました。
総領事館を訪れたカショギ氏は館内にいたサウジ関係者と口論になり、殴り合いに発展して死亡。その事実が隠蔽されようとしたとしました。
事件をめぐっては、トルコ側はカショギ氏が領事館内で殺害されたと主張し、サウジはこれを一貫して否定していましたが、ここへきて当初の説明を一転させた格好です。
このあたりの詳細については過去記事を参照してください。
サウジアラビア検察発表の調査結果要旨
1.ジャマル・カショギ氏はトルコ・イスタンブールのサウジアラビア総領事館で居合わせた人物と口論・殴り合いとなり、死亡した。
2.死亡は隠蔽(いんぺい)されようとした。
3.容疑者はカショギ氏をサウジに連れ戻す目的でトルコを訪れた。
4.サウジ国籍の18人を拘束。事件に関与した全員を訴追する。
5.国王令で、王室顧問や情報機関高官ら5人を解任する。
6.国王令で、ムハンマド皇太子を長とする委員会を設置し、情報機関の再構築と規則の見直しなどを行う
学校で子どもどうしが喧嘩をし、先生から怒られて反省文を書くように言われ、仕方なく書いた文章と同じようなものです。
ですから、まさにツッコミどころ満載になっています。
カショギ氏は「サウジアラビア領事館で居合わせた人物と口論・殴り合いとなり」とあります。「居合わせた人物」とは、皇太子の護衛にあたるSPや軍の特殊部隊の人間15人で、トルコ当局が入出国を確認しています。
BBCはこれら15人について詳細に報じています。↓↓
殺人のプロとでも言うべき15人を相手に、カショギ氏1人が殴り合いをしたというのです!カショギ氏がジェームス・ボンドやランボーなら、あり得る設定なのかもしれませんが・・・。
縛り上げてサウジに連行しようとしたが、激しく抵抗されたのでその場で殺害し、遺体という形でサウジへ連れ帰った、と読み替えるのが自然でしょう。
また、15人ものチームを派遣することは、最高指導者のムハンマド皇太子の指示がなければ出来ないというのが国際社会の大方の見方です。
命令した容疑がかけられる皇太子本人をトップに情報機関の改革を行うとは、被告人が検察と裁判官を兼ねるようなものです。 ガキ大将のよくやる手口そっくりです。
それにしても、アラビア語から英語に翻訳され、日本語になっているので無味乾燥な文章になるのはやむを得ないとしても、「黒」を「白」と言いくるめて政治的解決を図ろうとする、高級官僚が書く外交文書の典型的なものとなっています。
私たち「善良な市民」はじっくりと味読すべきかもしれません。
そして、実行犯の口封じが始まる?
トルコの『Hurriyet Daily News』紙は、カショギ氏殺害に関わった15人のチームの1人の男が交通事故で死亡したと報じています。
同紙によると、サウジアラビア空軍のマーシャル・サード・アル=ボスタニ大尉は10月2日にトルコに入国し、イスタンブールのサウジ領事館を訪問後、同日、サウジに帰国。その後、サウジの首都リヤドで交通事故に遭い、死亡したとのことです。
単なる事故か、それとも口封じのための殺人か? もちろん真相は定かではありませんが、イスラム法学者で中東情勢の専門家である中田孝氏はツイッターで、このボスタニ大尉の他にも実行犯が「これからもどんどん消されていく」と警鐘を鳴らしています。
以上、『記者殺害を認めたサウジアラビア検察の調査結果はツッコミどころ満載!』でした。