先日、国民民主党代表選挙候補者討論会なるものが大阪駅近くのホテルで開催され、友人に誘われて一緒に行ってきました。
ちまみに私は党員でも何でもないのですが、野次馬気分で出席したところ、なかなかまじめな政策の議論が行われていて、少々驚きました。
そこで、この討論会をレポートしてみます。
国民民主党代表選挙
国民民主党は、希望の党と民進党、無所属の議員らが今年3月に結党しました。これまでは、希望の党代表だった玉木雄一郎衆議院議員と民進党代表だった大塚耕平参議院議員が共同代表を務めていましたが、任期満了により退任。
そこで、同党の国会議員、地方議員、党員の投票による代表選挙が9月4日に実施されることになりました。
立候補者は2人。同党共同代表だった玉木雄一郎衆議院議員と元内閣府大臣政務官の津村啓介衆議院議員です。両者の詳しい経歴は同党HPをご覧下さい。
支持率1%の政党だけど盛況
国民民主党の代表選挙は8月22日から始まっています。ところがいっこうに盛り上がりません。マスコミの取り上げ方も、政治面は自民党総裁選挙、社会面は甲子園準優勝の金足農業ばかり。まあ、支持率が1%の政党ですから、仕方がないと言えばそれまでなのですが。
ですから、知人(同党所属の市議)から「国民民主党代表選挙候補者討論会」のお誘いを受けた時は乗り気ではありませんでした。ただ、当日は会場近くで用事があったこともあり、知人に義理立てして行ってみることにしました。
とにかく支持率1%の政党で、マスコミでも話題に上ることはほとんどないという状況ですので、会場がガラガラではないのか、もしかしたら出席者は数人ということでは、といった事が想像されました。
しかし、会場に入ってみると、なかなかの盛況ぶり。用意されたイスはすべて埋まっているという状況でした。
と言っても、300人ほどです。自民党の総裁選挙ならその10倍は集まるのでしょうか。
討論会の最初は候補者スピーチ
それなりに熱気のある雰囲気の中、討論会がスタートしました。最初は候補者2人によるスピーチです。
まずは、玉木雄一郎氏です。希望の党、国民民主党と代表を経験し、テレビ出演も多くこなしているだけあって、終始、余裕の表情です。大阪での開催だけあって、「まずは大阪桐蔭の優勝、おめでとうございます」から入るあたり、さすがと思わせます。
一方の津村啓介氏。衆議院議員当選6回の中堅ですが、不慣れなせいか、最後まで緊張気味。でも、丁寧な言葉遣いで語りかけるような口調には、とても好感がもてました。近畿圏での開催を念頭にか「豪雨被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます」という言葉から入る気遣いをしていました。
玉木雄一郎氏と津村啓介氏の政策
2人の候補者の語った政策をご紹介します。
まず、玉木氏はネットでも少し話題となった「コドモノミクス」を力説しました。具体的には、第3子を出産したら1000万円を給付するというものです。
気になるのはその財源ですが、「子ども国債」の発行、つまり借金です。子どもの成長に必要な予算は借金しても、子どもが健全な成長をとげれば良き納税者となり、また、人口減少に歯止めがかかり経済成長にもつながって、借金した額を超える税収が入ることも不可能ではないと言います。
一方、高齢者福祉に要する予算は税金と保険料で賄うとのこと。現状は高齢者福祉も借金して賄っているが、これは将来的にはリターンがないのでやめる。これまで頑張っていただいた高齢者への福祉予算は、税金という形で全世代が負担するのが望ましいということでした。
次に、津村氏は、ポスト・アベノミクスの新しい経済政策を訴えました。具体的には、インフレ2%目標を撤回し、マイナス金利政策をストップすると言います。マイナス金利政策は借金している者、すなわち大企業だけが得をする政策であり、一般消費者には文字通りマイナスにしかならないと力説しました。
また、タブーなき政策提言として、尊厳死(安楽死)の合法化に向けた議論を行うということです。日本人の生き方、死生観を大きく左右するテーマに果敢に挑んでいきたいとのことでした。
会場との質疑応答
候補者からの一方的な演説だけに終わることなく、会場の出席者との質疑応答も行われました。党員として頑張って活動している人にとっては、日頃の疑問などをぶつける良い機会となり、とてもいい企画だと思いました。
約40分近く行われ、参議院議員選挙・統一地方選挙対策、憲法改正、大阪維新の会との関係などに多くの質問が出されました。
それ以外で面白いと感じたのは、日本が核兵器禁止条約を批准していない点についての質問でした。
玉木氏は「政権を取ったらすぐに批准します」とキッパリと答えたのに対し、津村氏は「党内の議論、アメリカとの関係を考慮して判断する」と言うのにとどめました。
こうした公開の討論会では、ズバリ言い切った方がウケます。討論会慣れしている玉木氏はすべて読み切っての発言でしょう。「ウケ狙い」という感じすらしました。
一方の津村氏の答えは、官僚の国会答弁みたいで何の面白みもありません。ただ、唯一の戦争被爆国として核兵器廃絶をめざすのは当然だが、アメリカとの関係を考えるとここで一刀両断で結論を言うことはできないという意識が働いたものと推測されます。
選挙ウケする言動と政策に真摯に向き合う言動とを、同時に見ることができた瞬間でした。個人的には、津村氏の答えには、無味乾燥だけれども安定感を感じました。民主党政権失敗の原因の1つは、普天間基地の鳩山由紀夫氏の不用意な発言でしたから。
おわりに
こうした討論会には初めて参加したのですが、総じて、まじめな議論が行われていたという印象です。アメリカ大統領選挙のような中傷合戦など皆無で、互いにリスペクトする姿勢も見られました。
ただ、代表選挙が終わった途端、バラバラ感が出てしまうのもこの党の特徴でもありますが・・・。
誘ってくれた友人の評価は、「野党党首なら玉木、政権を担うなら津村」と言っていました。
以上、『「国民民主党代表選挙 候補者討論会」に行ったら、まじめな議論が行われていた!』でした。