自民党総裁選は、安倍首相が3選を果たしました。
最初から結果が分かりきっていただけに、世間の関心はそれほど高くなかったように思えました。私も関心はありませんでした。
ただ、「ほう」と思ったのは、小泉進次郎氏が石破茂氏支持を明言したことです。しかも、投票直前に、です。
よくよく考えてみれば、この対応は計算され尽くされたもので、ポピュリスト・小泉進次郎の真骨頂とでもいうべきものでした。
総裁選は「強豪私立vs地方公立」の図式
自民党総裁選挙の結果は、安倍氏が553票に対して石破氏が254票。ダブルスコア以上の大差で安倍首相が3選を果たしました。
マスコミの見立てよりも石破氏の得票が多かったことで、その善戦ぶりが称えられています。
高校野球に例えてみれば、圧倒的戦力を誇る強豪私立高に地方の公立高が挑んだみたいなものです。
私立の5回コールド勝ちを大方が予測していたのが、意外と公立が踏ん張って9回まで戦った。打ったホームランの数では遠く及ばないものの、ヒットの数(地方票)ではひけはとらなかった・・・。という感じでしょうか。
小泉進次郎、投票直前に「石破支持」明言
そのような中で、「ほう」と思ったのは、小泉進次郎氏が石破支持を明言したことです。しかも、投票が行われる直前に、です。
石破支持を決めた理由は、要は、「安倍1強」ではなく多様な意見がある政党であることを証明するためだとしています。
宴席でみんなが「とりあえずビール」という中で、「僕はハイボール」と言う小泉氏らしい発想だと『プレジデントオンライン』は書いています。
石破支持は早い段階で決めていたといいます。2013年の総裁選でも石破氏を支持していので違和感はありません。
それでは、なぜ、それまで沈黙を貫き、投票結果にまったく影響を与えない直前というタイミングに明言したのでしょうか。
このタイミングこそ、小泉氏がポピュリストたるゆえんでもあります。
安倍首相に配慮して世論の注目を浴びる
安倍首相サイドからすれば、小泉氏の石破支持は織り込み済みだったでしょう。安倍氏サイドが最も恐れていたことは、選挙序盤から石破支持を明言し、石破氏と小泉氏がセットになって全国を回って活動することでした。
そうなれば、いずれは小泉氏を総理にと考えている若手議員に影響を与えたでしょうし、地方の票はひっくり返っていたかもしれません。
投票直前に表明することは、石破氏の選挙運動はしなかったことの証明であり、安倍氏サイドにとっては、ぎりぎり許すことができる対応でした。
もちろん、誰を支持するかを最後まで言わないという選択肢もあったでしょう。一番の安全策です。でも、それでは世論の注目は浴びません。
石破陣営の斉藤農水大臣が「石破氏を応援するなら閣僚の辞表を出せ」と自民党幹部から恫喝されたことを暴露しました。
石破氏を支援したら後で報復されると、誰も彼も安倍氏になびくなか、「僕は恫喝にも屈しない」ことを見せつけるには、あのタイミングは絶妙です。
しかも、石破氏の国会議員票は73票。直前の表明で結果の大勢に影響を与えないとはいえ、73分の1の小泉氏の一票は石破氏からすれば涙が出るほど嬉しいはずです。安倍首相への配慮とともに石破氏に恩を売ったことにもなっているわけです。
小泉氏の対応は、「恫喝には屈しない」姿勢を世論にアピールするとともに、安倍首相にも配慮して関係を悪化させることを回避しました。
こうして考え尽くされた行動は、総裁戦後のマスコミが勝者・安倍首相よりも小泉氏に熱い視線を集めました。まさにポピュリストの真骨頂ここにあり、でした。
ポピュリスト・小泉の次なる試金石
3選を果たした安倍首相は近々、内閣改造・党役員人事を行います。安倍首相のことですから、石破氏本人は冷遇するでしょう。
ただ、「選挙が終わったら一致団結」を見せることも重要で、石破氏支持議員の一部は大臣に起用されるはずです。
ここで、その候補に小泉進次郎氏が挙がることが考えられます。全国的な知名度と人気を誇る小泉氏を大臣にすれば、安倍内閣の目玉になり内閣支持率の上昇につながるかもしれません。
また、石破支持を明言した小泉氏をあえて抜擢することで、度量の大きさを見せつけることもでき、安倍首相にとって一石二鳥の人事と言えなくもありません。
では、大臣就任を要請されたら、小泉氏はどうするのか?
「選挙で選ばれた安倍首相に協力するのは当然」と言って大臣に就任するのか、それとも、「安倍首相ではなく石破氏を支持したのだから」と拒絶するのか?
ポピュリスト・小泉進次郎の次なる試金石です。お手並み拝見というところです。
以上、『自民党総裁選の対応は、ポピュリスト・小泉進次郎の真骨頂!』でした。