ビートたけし『バカ論』にみる「明石家さんま」論

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事務所独立で何かと話題となっているビートたけし。

 

遅ればせながら、昨年に出版された『バカ論』(ビートたけし)を読んでみました。

 

そこで語られた明石家さんまについての見方が面白かったです。「しゃべりの天才」と賞賛する一方で、「教養なき天才」とも。

 

『バカ論』での「明石家さんま」論をもとに、さんまの面白さの秘訣を考えてみました。

 

ビートたけし『バカ論』にみる「明石家さんま」論

『バカ論』は2017年10月出版ですから、すでに読まれた方も多いでしょう。

 

私も遅ればせながら読んでみましたが、たけしが3時間ほどしゃべった事をライターがまとめたというだけあって、何だか漫談を聞いているかのようでした。

 

最も目を引いたのが、明石家さんまについて語った部分。少し長くなりますが、引用します。

 

さんまは、しゃべりの天才

それはもう突出した才能がある。テレビでトークさせたら、右に出る者はいないんじゃないか。反射神経と言葉の選択のセンスは凄い。

ただ、いかんせん教養がない。

そこが限界かもしれない、と思ったりもする。(中略)

トークに関して大天才なのは認める。けれど、例えば数学者と話す場合、その笑いのキーがどこのあるのかわからない。数学者の外見や私生活、奥さんの話を突っ込んで、そこから話を膨らませるのは上手いけど、数学そのものの話はできないから。これでもっと教養があればと、惜しいと思う時がある。

だからさんまは、「教養なき天才」ということ。 

 

「しゃべりの天才」と賞賛する一方で、「教養なき天才」とも評しています。教養がない人を「バカ」と言ったりしがちですが、それに「天才」と最大限の褒め言葉をつけているところがミソだと思います。

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バカ論 (新潮新書)

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「教養なき天才」明石家さんま

 もう少し、『バカ論』からの引用です。

 

バラエティ番組の中で、素人でも誰でもどんな相手でも面白くする。

けれど、相手が科学者や専門家の場合、結局自分の得意なゾーンに引き込んでいくことはできるし、そこで笑いは取れる。でも、相手の土俵には立たないというか、アカデミックな話はほとんどできない。

男と女が好いた惚れたとか、飯がうまいまずいとか、実生活に基づいた話はバツグンにうまいけど。 

 

上記の部分を読んで思い出したTVシーンがありました。2012年、FNS27時間テレビで、たけしとさんま、タモリがそろって出演した場面です。この3人で27時間テレビをやってはどうかとアナウンサーからふられた時に、こういうやりとりがありました。

 

(27時間テレビを3人でやってはどうか)

さんま:せえへんよ。

たけし:いいよ、やろうよ。

さんま:(嫌そうな顔をしているタモリに向かって)やりませんよね。

タモリ:やらない。

さんま:今のは「やる」って言って、「やるんかいっ」というパターンやろ!

タモリ:おい、自分のお笑い以外は正しくないのか? 

 

要は、相手が誰であろうと、自分の土俵に引きずりこんでいき、決して相手の土俵には乗って勝負することはしないということです。

 

自分の専門とする土俵は、生活に密着した話であって、そこでの勝負以外は一切しないとわけです。 

 

教養を必要とする土俵には乗らないのが自分の芸風なのだから、「教養がない」と言われても困るんやけどな、との声が聞こえてきそうです。

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さんまの限界?

たけしは、こうしたさんまの芸風を「天才」と評価した上で、さらに芸風を広げ深めるには「教養」が必要だと述べたのでしょう。

 

『バカ論』では、1980年代の漫才ブームの際、関西芸人に対抗するためにネタはもちろん、言葉遣いにいたるまで考え悩み抜いたとあります。

 

誠に勝手な推測ですが、さんまが1人でしゃべりの稽古だとかを一生懸命やっている姿は想像ができません。「芸を磨く」とは縁遠いイメージです。

 

数年前、芸人のマネージャーの経験もある吉本興業の方と話したことがありますが、「たけしさんやタモリさんは、移動の時に文庫本や専門書に目を通す姿をよく見かけた。さんまさんは、移動の時は、ひとしきりしゃべっているか、寝ているかのどっちか」と言っていました。

 

この人は、「さんまさんが売れなくなることは考えにくい。でも、どこかで限界がくるかもしれない」とも言っていました。

 

また、さんまは弟子は一切とらないことにしています。この点にについても、「さんまさんは、『弟子をとったって、教えることはなんもあらへんがな』と言ってるんです。ここも心配な点なんです」と言っていました

 

まとめ

明石家さんまは、売れ出した頃からずっと見続けてきました。とても好きな芸人です。

 

ただ、何か物足りなさを感じることもありました。それを、たけしが指摘してくれたと思います。

 

おそらく、さんまは、芸を売っているという感覚ではなしに、自分を売っているという感覚なのでしょう。ですから、身の丈以上のものには手を出さないわけです。

 

必ず自分の土俵で勝負するというパターンは鉄板です。今後も変わらないでしょう。

 

でも、1度でいいから、たけしのように宗教を語ったり、タモリのように博識ぶりを披露しながら大爆笑をとるさんまを見てみたいのですが・・・。「知ってても言わんだけや」ということでしょうか。

 

以上、『ビートたけし『バカ論』にみる「明石家さんま」論』でした。