〈スピードスケート女子が大躍進〉
平昌五輪もいよいよ終盤です。
日本人選手の冬季五輪でのメダル獲得数は長野大会を上回りましたが、これは、スピードスケート女子の大躍進によるものだと言ってもいいでしょう。
スピードスケート女子選手獲得メダル
金・・・小平奈緒 500m
金・・・団体 パシュート
金・・・高木菜那 マススタート
銀・・・高木美帆 1500m
銀・・・小平奈緒 1000m
銅・・・高木美帆 1000m
お見事の一言です。
以前から、日本女子選手の潜在能力は海外からも高い評価を受けていましたが、なかなか結果に結びつきませんでした。それが、ここにきて大きく開花ことができたのです。
大きく開花した理由とは?
〈苦戦が続いた五輪〉
今回の平昌大会こそ大躍進をとげていますが、これまでの大会では苦戦が続いていました。
個人種目のメダル獲得は、1998年長野大会の岡崎朋美の銀メダルが最後。
2010年バンクーバー大会では、団体パシュートで銀メダルを獲得したものの、前回のソチ大会ではメダルなしに終わってしまいました。
〈オランダ式練習方法の導入〉
ソチ大会でメダル獲得が期待されたものの十分な活躍ができなかった小平奈緒選手は、挫折感を払拭すべく、スケート大国オランダに2年間、留学しました。
背中を丸めて重心を低くして空気の抵抗を少なくする姿勢や練習方法など、世界一のノウハウを持ち帰りました。
オランダ式の練習方法の最大のポイントは、選手一人ひとりのデータから年間の練習プランを組み立てることにあります。
目標とする試合に向けて、一定の期間ごとにコンディションを上げていくという方法論で、これはサッカーなどで採用されており、スケートに応用しているものです。
また、日本代表チームに、オランダからヨハン・デビット、ロビン・ダークス両氏をコーチに招聘しています。
デビッド氏は、自転車トレーニング機器を使用して計測した酸素摂取量などのデータを基にしてトレーニングメニューを用意し、睡眠や食事管理にも指導が行われました。
その結果、ソチ大会の代表にも漏れた高木美帆選手は、筋力が倍増し、脂肪が減り、体幹が安定してカーブでも上体がぶれなくなったといいます。
〈日本代表チームを強化〉
もう一つの大きな変革は、日本代表チームの強化です。
ソチ大会までは、実業団や高校・大学などの所属別のトレーニングが主流でしたが、そうした垣根を取り払った日本代表チームの強化を図りました。
かつては橋本聖子選手や岡崎朋美選手らが所属した富士急行の選手も減っていくなど、実業団チームは先細りが目立っています。
これまで、「チーム任せ」「選手任せ」だったものが、代表チームに招集することで、年間を通して強化する体制を整えることが初めて可能となりました。
高いレベルの選手どうしが切磋琢磨する環境は、選手間の情報交換が密になり、競争原理も働いて、国際大会で実力をいかんなく発揮する素地となっています。
また、代表チームに招集された選手が国際大会で結果を出し続けていると、代表チームを軽くみていた従来の固定観念が覆り、「何としてでも代表入りしたい」という選手が増えるという、いいサイクルが出来上がっています。
〈平昌の後に〉
オランダを手本にして、オールジャパンでメダルラッシュを成し遂げたスピードスケート女子。次回、北京大会では、他国から徹底的に研究され、逆に手本とされて追われる立場となります。
オランダ流をバージョンアップさせた「日本流」を構築できるかどうか。
また、今回の大躍進によって、スピードスケート競技人口の減少に歯止めがかかると予想されますが、有能な人材を発掘・育成できるか。
次回、北京大会が今から楽しみです。
以上、『スピードスケート女子 大きく開花した2つの理由』でした。