国会中継で官僚が答弁しているのって、難しい単語ばかりでよくわからないですよね。
「諸般の事情に鑑み、可及的速やかに粛々と善処いたします」って聞いても???
そこで、彼らがよく使う独特の官僚用語10個を日常語に訳してみます。
この「官僚用語辞典」を読めば、国会中継が2倍面白くなると同時に、市町村役場の職員の言葉も理解できますよ!
- 《 記憶にない 》
- 《 善処します(ぜんしょ)》
- 《 粛々と(しゅくしゅくと)》
- 《 可及的速やかに(かきゅうてきすみやかに)》
- 《 鋭意努力します(えいいどりょく)》
- 《 諸般の事情に鑑み(しょはんのじじょうにかんがみ)》
- 《 誠に遺憾(まことにいかん)」》
- 《 喫緊の課題(きっきんのかだい)》
- 《 重く受け止める 》
- 《 不退転の決意(ふたいてんのけつい)》
- ◆まとめ◆
《 記憶にない 》
日常語訳:真実を言うわけないでしょう。
解 説:指摘されたことは真実(事実)に間違いないが、真実でないとウソを言え ば後で問題にされると困る時に使われる。
使用例 :「そのようなことは記憶にございません」
《 善処します(ぜんしょ)》
日常語訳:何もやりません。
解 説:何もやる気はないが、そう言うと相手が怒る場合に使われる。
使用例 :「○○対策については善処してまいります。」
《 粛々と(しゅくしゅくと)》
日常語訳:反対意見などは聞かずに進めていく
解 説:実施している政策の悪い点が明らかになっても、脇目もふらず予定通りに進めていく時に使われる。
使用例 :「ご批判をふまえながら、粛々と進めてまいります」
《 可及的速やかに(かきゅうてきすみやかに)》
日常語訳:そのうち暇が出来たら・・・
解 説:まったくやる気がないわけではないが、そんなに急ぐ必要はないと判断された時に使われる。
使用例 :「ご指摘の対策は可及的速やかに実施してまいります。」
《 鋭意努力します(えいいどりょく)》
日常語訳:やるにはやるけど、まあ無理ですよ。
解 説:考え方は理解できるものの、実現不可能だと判断した場合に使われる。
使用例 :「ご提案の趣旨をふまえ、鋭意努力いたします」
《 諸般の事情に鑑み(しょはんのじじょうにかんがみ)》
日常語訳:いろいろと意見があるようだから、一応は、上司の顔色は窺ってみるけど・・・
解 説:反対意見がいろいろ出されるので、とりあえずは慎重に進めるポーズを示さないといけない場合に使われる。
使用例 :「諸般の事情に鑑み、××対策については引き続き協議してまいります。」
《 誠に遺憾(まことにいかん)」》
日常語訳:悪いとは思っていないけど、口だけだったら謝ります。
解 説:悪い事態が起こった時、自分の責任ではないが一応は謝っておいた方が批判されずに済む場合に使われる。
使用例 :「このような事態を招き、誠に遺憾に存じます」
《 喫緊の課題(きっきんのかだい)》
日常語訳:どうでもよい課題
解 説:大したことではないと思っているのに、相手が重要だと声高に主張する場合に使われる。
使用例 :「○○議員が言われたことは、喫緊の課題だと考えております」
《 重く受け止める 》
日常語訳:ほとぼりが冷めるまでは、真剣なフリをします
解 説:悪い事態が起きた時や批難された時、真剣に耳を傾ける姿勢を示した方が丸く収まる場合に使われる。
使用例 :「このような事態を招いたことを、重く受け止めています」
《 不退転の決意(ふたいてんのけつい)》
日常語訳:とりあえず口で言う程度の決意はします。
解 説:不祥事などの解決を迫られた時に、いやいやでも取り組まないとマズい場合に使われる。
使用例 :「不退転の決意で問題解決に取り組んでまいります。」
◆まとめ◆
以上、10個の官僚用語を使って、国会の答弁を再現してみましょう。
そのようなことは記憶にございません。
ただ、ご指摘のような状況は誠に遺憾であり、重く受け止めております。また、これは喫緊の課題だと認識しておりますので、諸般の事情を鑑みた上で、可及的速やかに、粛々と不退転の決意で鋭意努力するとともに、善処してまいります。
これを、「官僚用語辞典」を使って日常語に訳してみます。
あなたの言うことに間違いないけど、そう言えるはずないでしょ。
あなたのいう問題は、俺のせいじゃないよ。口だけならいくらでも謝るけどね。まあ、しばらくは深刻そうな顔はしますよ。そもそも、そんな大した問題でもないと思うけど、うるさく言うから上の偉い人の顔色は窺うくらいはしますよ。暇が出来たら、あなたの意見など聞かずに、とりあえずはやってみるかもしれないけど、まあ、結局はやることはないでしょうね。
◆付録① 《いずれにしても》◆
AかBかの二者選択を迫られても、どちらを答えても後味が悪くなる場合が日常生活でもあります。
そんな時、官僚用語では「いずれにしても」を用いて、抽象論で逃げることができて便利です。
例えば、野球とサッカーのどちらが好きかと聞かれた時、彼らはこう答弁します。
私は、子どもの時分からキャッチボールをよくしていましたので、野球には親しみを感じています。
また、サッカーは息子が中学の部活でやっておりまして、よく試合を見にいきます。
いずれにしても、私はスポーツが大好きです。
◆付録② 《ご飯論法》◆
ネット上で話題となった「ご飯論法」を再現しておきます。質問に真正面から答えることは絶対にせずに、抽象論・一般論でひたすら逃げまくる方法です。
──朝ごはんは食べなかったんですか?
「ご飯は食べませんでした(パンは食べましたが、それは黙っておきます)」
──何も食べなかったんですね?
「何も、と聞かれましても、どこまでを食事の範囲に入れるかは、必ずしも明確ではありませんので」
──では、何か食べたんですか?
「お尋ねの趣旨が必ずしもわかりませんが、一般論で申し上げますと、朝食をとる、というのは健康のために大切であります」
以上、『国会中継が2倍面白くなる「官僚用語辞典」』でした。