絵本・童話『かわいそうなぞう』をご存じでしょうか?
小さい頃に親に読んでもらったという方、子どもによく読み聞かせをしていたという方、たくさんおられることでしょう。何せ、今日まで200万部を超える大ベストセラーですから。
最後にはやせ細った体でエサをもらおうと芸をしながら餓死するという涙なくして語れないストーリーですが、真相は、政府の戦争プロパガンダのために殺されたということを聞きました。
『かわいそうなぞう』
子どもが小学校に入る前までは、寝る際に絵本の読み聞かせをよくやっていました。
絵本を読み進めていくうちに、その悲しいストーリーに子どもだけでなく自分まで涙を流すということがしょっちゅうありました。
そういう絵本の代表作が、『かわいそうなぞう』(作・土家由岐雄)。何度読んでも泣けてくる名作で、1970年に出版されて以来、現在までに200万部を超える大ベストセラーとなっています。
ここで、そのあらすじをおさらいしておきましょう。
第二次世界大戦が激しくなり、東京市にある上野動物園では、空襲で檻が破壊されて猛獣が逃亡する危険性を考え、殺処分を決定する。ライオンやトラ、クマが殺され、残すはゾウのジョン、トンキー、ワンリーだけになる。
ゾウに毒の入った餌を与えるが、ゾウたちは餌を吐き出してしまい、その後は毒餌を食べないために殺すことができない。毒を注射しようにも、象の硬い皮膚に針が折れてしまうため、餌や水を与えるのを止めて餓死するのを待つことにする。ゾウたちは餌をもらうために必死に芸をしたりするが、ジョン、ワンリー、トンキーの順に餓死していく 。
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『かわいそうなぞう』のサブタイトルには「おはなしノンフィクション絵本」とありますが、ゾウが餓死させられた真相は別のところにあるという話を耳にしました。
戦争プロパガンダのために殺された
第二次世界対戦の激化により、空襲の際に動物が逃げ出した場合の危険性を考え、猛獣を殺処分する「戦時猛獣処分」の命令が1943年、陸軍から出されました。
作中では「毒を注射しようにも、ゾウの硬い皮膚に針が折れてしまう」ため、餓死させたとなっています。しかし、これは事実とは異なるようです。
ゾウへの注射は耳にするのが当時から常識となっていて、実際、健康チェックのための採血を頻繁にやっていたようです。
本気で毒の注射をする気なら簡単にできたはずなのに(他にも銃殺などもできたはず)、どうしてやらずに餓死させてしまったのでしょうか。
当時、戦況が不利になって生活の余裕もないにもかかわらず、芸達者で大人気のゾウをお目当てに300万人もの入園者がいたといいます。
「政府は、この人気者のゾウに目をつけた」と、上野動物園に勤務した経験を持つ動物学者の新宅広二氏は述べています。さらに、核心部分についてこう言っています。
本当は東京市(当時)から「餓死させろ」というお達しがあったのです。「人気者のゾウも飲まず食わずで頑張っているんだ、お前らも頑張れ」っていうネタに使うために餓死させられたのです。プロパガンダとして使われてしまった。悲惨なことですよね。
これでは、『かわいそうなぞう』そのもの、です。
上野動物園にはこの象舎があった近くに動物慰霊碑が建てられています。戦争で命を奪われた動物たちに対しての慰霊の行事は、戦後70年余を経た現在も続けられています。
おわりに
戦後直後の日本には、家族や住む家もない子どもたち(戦争孤児)が何十万何百万といました。
この戦争孤児たちの健やかな成長をいかにはかるかを考えた政府は、再び、動物に目をつけました。
上野動物園にいるゾウを列車に乗せて地方へと巡回する「移動動物園」を開催すると、子どもたちは大喜び。動物にこんな力があるのなら、ということで全国に公立の動物園が作られていったということです。
動物たちを生かすも、殺すも、その時の人間さまの都合によるということです。
以上、『『かわいそうなぞう』のゾウは、戦争プロパガンダのために殺された!』でした。