高校野球の夏の甲子園が終わり、気の早い人の関心は来春のセンバツに向かっています。
その春のセンバツの参考材料となる秋の県大会が各地で行われています。
私も母校の応援に県立球場へと駆けつけました。そして、母校劣勢の9回に「あの光景」が再現されたのです。そう、甲子園で見られた「判官びいき」応援です。
県大会1回戦ですから観客は1,000人弱ですが、それだけ余計にに音が響き合ってエグイ状況になっていました。
母校の応援に県立球場へ
夏の甲子園出場を逃した我が母校、来春のセンバツこそはとの思いで、秋の県大会1回戦に県立球場へと応援に足を運びました。
試合開始は午前10時でしたが、前夜からの雨の影響でグランドには水たまりのようなものがいくつもできていました。
ただ、雨はあがっており、試合開始時間を1時間遅らせてのグランド整備です。球場関係者だけでなく、試合する高校の控えの選手が総出で整備にあたります。高校野球ならではの光景で、何だかほっこりした感じになります。
水を拭き取り、新たに土を入れて1時間半遅れでプレーボールです。
我が母校は投手がそこそこ踏ん張ったものの、打線が一向に振るわず、0-3で9回を迎えます。
先頭打者がセンターオーバーの2塁打を放った途端、あの光景が再現されたのです。そう、夏の甲子園大会でも見られた、負けているチームを過剰に応援する「判官びいき」応援です。
「判官びいき」とは
弱者や薄幸の者に同情し、味方したり応援したりすること。また、その気持ち。「判官」は官職名で、検非違使の尉(判官)の職にあった源義経のこと。源義経が兄の頼朝にねたまれて滅んだことに、人々が同情を寄せたことからいう。
地方球場でも「判官びいき」応援
9回表、先頭打者が2塁打で出塁すると、数にして千名に満たない観客が、応援団(と言っても、ベンチ入りができなかった野球部員とその保護者ら計50名ほど)が地声でがなりたてるコンバットマーチに合わせて手拍子を始めたのです。
次打者がセンター前にタイムリーヒットを放って1点を返すと、さらに盛り上がり、観客の8割方が手拍子をする有様です。
ブラスバンドなどの鳴り物も響かず、グランド上での選手のかけ声がはっきりと聞き取れるほどの静かな状況が続いてきただけに、多くない観客が一斉に手拍子をすると、一種異様な雰囲気となりました。一言で言って、エグかったです。
我が母校をみんなが応援してくれているのですから、有り難いことに違いないのですが、逆に、相手チームの選手には「気の毒になあ」と思いもよぎってしまいます。
夏の県大会で3年生が引退し、2年生中心の新チームになって初めての公式戦です。多くの人に見られて試合をするのも初めてでしょう。
そして、ただでさえ緊張する9回になって、いきなりアウェーの状況に置かれるわけです。冷静にプレーしろと言われてもムリな話とはこのことです。時折、困惑した表情で球場を見渡していた対戦チームの投手や捕手の姿が忘れられません。
「俺たちこんなに嫌われてるんだ」
劣勢のチームに終盤だけ肩入れする「判官びいき」応援は、今夏の甲子園で顕著に見られました。
日大三高と奈良大附属高の一戦。5点を追う奈良大附の9回の攻撃では、応援団席だけでなく球場全体が手にしたうちわを応援歌のリズムに合わせてたたき鳴らしました。ショートを守っていた日大三の日置主将(U18日本代表)はその時の状況についてインタビューに答えています。
正直、「俺たちこんなに嫌われてるんだ」って気持ちで萎えかけました。投手がストライクを取っても、拍手してくれるのは一塁側のアルプスだけ。うちわをたたく音ってグランドまでめちゃくちゃ響くんです。
タオルを振り回しての応援は、大会本部の自粛要請で見られなくなったものの、今度はうちわたたき。
タイブレークで逆転サヨナラ満塁ホームランを浴びた星陵、花咲徳栄に追い詰められた横浜からも「球場全体が敵に見えた」と失意の声が選手からあがっていました。
「夏フェス」と化した甲子園球場
長年の高校野球ファン(本人は評論家と自称)が言うには、高校野球芸人なるものが出現してテレビ等で勝手に魅力を話したりしたので注目度が増し、「一度、見に行ってみるか」というにわかファンが増えた影響だと言います。
そして、甲子園球場は「夏フェス」と化しているとも言います。確かに、青い空、緑の芝、風、灼熱の太陽、球音とブラスバンドの演奏が五感を刺激し、気分が高揚するのもわかります。
そのハイ・テンションが、盛り上がらないと損だとばかりに手拍子をやうちわたたきとなっているのかもしれません。
また、少しでも長く試合を楽しみたいとドラマチックな同点劇・大逆転を期待しての手拍子は、何だか夏フェスの「アンコール」と似てなくもありません。
でも、夏フェスには守るべきマナーがあるはずです。「判官びいき」が日本人の共通心理だとしても、少し度が過ぎ、節度を欠いているように思えます。
入場券を買っているのだから楽しみ方は自由だと言われれば、返す言葉はありません。手拍子やうちわたたきを制限することは、現実的には難しいでしょう。
負けていても勝っていても、選手は一瞬一瞬に全力を尽くしています。高校3年間、毎日毎日、白球を追い続けた集大成が甲子園です。球児たちが思う存分プレーできる環境を整えてあげることも、観る側の責任だというと言い過ぎでしょうか。
一方に味方し過ぎると、巨大なプレッシャーがもう片方にのしかかること、大きな応援は選手を勇気づけるけれども、一方で傷つけることになりかねないということを、決して忘れることなく節度を持って観戦したいものです。
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おわりに
甲子園には魔物がいるとよく言いますが、ホント、不思議なことが起こります。
今夏の大会準決勝では、金足農業に対して1点を追う9回の日大三高の攻撃で、1死から出塁しても「判官びいき」応援はまったく起こりませんでした。
一体、なぜなのでしょう?
以上、『【高校野球】甲子園の「判官びいき」応援は地方球場ではもっとエグかった。』でした。