昨年(2018年)夏頃に、「給料のデジタルマネー払いを可能にしてほしい」との要望が財界より出されていると、一部の報道にありまして注目していました。
その後、政府内でいろいろと議論されていたようですが、本年(2019年)2月に、厚生労働省はデジタルマネーでの賃金支払を解禁する方向で検討していることを明らかにしました。
早ければ、今年中(2019年)には実現するとのこと。
あなたが、SuicaやLINE Payで給料を受け取る日は近いと言えるでしょう。
賃金のデジタル払いが解禁
2019年2月、厚生労働省は、デジタルマネーを使って賃金を支払うことを解禁する方向で検討していることを明らかにしました。
なぜ、「解禁」という言葉が使われるのかというと、労働基準法で企業は現金で給料を支払うことを原則として定めていて、銀行振込は厚生労働省令で特例として認めています。
つまり、現金を手渡すか、銀行振込以外は禁止しており、その禁止を解いて、デジタルマネーでの支払を認めることになるわけです。
デジタル払いが解禁される背景としては、デジタル決済が普及したことや、新たな在留資格の創設によって外国人労働者が増加することがあります。
日本での保有財産や取引実績の少ない外国人は銀行口座の開設が非常に難しく、財界筋をはじめ外国人労働者の多い東京都などの自治体が、デジタル化の解禁を政府に強く要望していました。
「デジタル払い」ー具体的には?
デジタルマネーとは、お金を使わずに電子情報のみで代金を支払う仮想貨幣のことです。
電子マネーやスマホ決済にような、一定の金額をICカードやスマホのアプリ上でチャージして加盟店で決済できる「前払い(プリペイド)型」と、クレジットカードやデビットカードのような、後から口座引き落としされる「後払い(ポストペイ)型」に大きく分かれます。
給料を受け取る人は、デジタルマネー支払と従来通りの現金支払のどちらかを選択します。
デジタルマネー支払を選択した場合、指定したカードや決済アプリに企業が入金し、入金された給料はATMなどで一定回数以上は手数料なしで現金を引き出すことが可能となります。
なお、今回の解禁では、仮想通貨は対象とはなっておりません。
Suicaは対応はできない
給料をデジタル払いする際、厚生労働省としては、「ATMなどで、一定回数以上は手数料なしで現金で引き出せる」ことを条件としています。
「手数料なしで現金で引き出せる」という条件は、現状で使われている電子マネーではハードルが高く、対応できるものが思い浮かびません。
既存の電子マネーは、一度、チャージしてしまうと現金には戻せない、あるいは払い戻し手数料が必要なものばかりです。
また、チャージできる金額も問題です。Suicaはチャージできる上限が2万円、Edyは5万円ですから、アルバイト代ならともかく、給料の受け取りには無理があります。
スマホアプリ「LINE Pay」は対応できる
一方、スマートフォンで利用できるアプリ、KyashやLINE Payはどうでしょうか。
Kyashは現金に戻すことができないため、給料支払に対応することはできないと考えるべきです。
LINE Payは、すでにセブン銀行とも連携しているため、今のところ手数料が必要であるものの、現金で引き出すことは可能となっています。
また、LINE Payは、その上限額は100万円となっています。1ヶ月の給料が100万円を超える方は無理ですが、平均的な会社員の給料額なら十分な限度額となっています。
おわりに
賃金のデジタル払いが解禁された場合、現在のところで可能性があるのは、LINE Payが候補となりうるでしょう。
ただ、ビジネスチャンスの拡大にもつながる改革ですから、他が指をくわえて眺めているとは考えられません。
海外では給料専用のプリペイドカードが盛んに使われていることもあり、デジタル化の需要が高まるとなれば、Suicaの上限額が100万円に引上げられることも容易に想像できます。
もちろん、電子マネーなど運営会社が経営破綻などの状態になってしまった時、給料をいかに保護していくのかは大きな問題です。
金融機関が破綻した場合と同様に、利用者を救済・保護できるような制度を設けることは欠かせません。
以上、『【賃金デジタル払い解禁】SuicaやLINE Payで給料を受け取る日が近い!』でした。