私たちの視界に飛び込んでくる色で、最も目立つのは何と言っても赤でしょう。
とてもエネルギッシュで活発なイメージ、若さを感じます。
そんな赤色ですが、赤と言えば何が思い浮かぶでしょうか?
たいていの人は、郵便ポスト、神社の鳥居、広島カープ、サンタクロースのいずれかを答えるのではないかと思います。
そこで、これらの「赤い理由」について調べてみました。
赤の性質
赤はエネルギーを感じさせるアクティブな色です。太陽や火など、人間が生きていくために必要なものと多く結びついていて、他のどの色よりも強い刺激があります。
また、気分を高揚させる働きから元気を与えてくれ、スポーツでは闘争心を強く駆り立ててくれます。
赤の心理効果としては、以下のものがあります。
・活力を感じ気持ちを前向きにさせる。
・アドレナリンを分泌し興奮を促す。
・熱や暖かさを感じる。
・食欲を増進させる。
・時間経過を早く感じさせる。
赤い理由---郵便ポスト
日本で郵便制度が始まった1871年(明治4年)、設置された郵便ポストの数は全国で62ヶ所でした。(ちなみに、現在は約19万ヶ所)
そして、当時のポストの色は黒色でした。ただ、公衆便所が広く普及し始めた時期と重なったこともあり、黒い郵便箱の「便」を見た通行人が郵便箱を「垂便箱(たれべんばこ=トイレ)」と勘違いしたケースがあったようです。
また、当時は街灯などがほとんど整備されていなかったため、夜間は見えづらいという問題がおこりました。
そこで、1901年(明治34年)、火事に強い鉄製の赤色丸形ポストを試験的に導入した際に、「目立つ色」として赤色に変えられました。他の目立つ色も考えられましたが、郵便制度のお手本としたイギリスも赤色ポストだったこともあり、赤が選ばれました。
以降、赤くて丸いポストの時代が続きますが、1949年(昭和24年)、大量の郵便物の差し出しや取り集め作業のスピードアップをはかるため角型となり、今日にいたっています。
日本をはじめインド、インドネシア、タイ、韓国、台湾のポストの色が赤いのは、イギリスから郵便制度を導入した国やイギリスの旧植民地だった影響があります。
他には、アメリカやロシアは青色、ドイツ、フランスなどヨーロッパ諸国は黄色が主流です。中国やアイルランドは深緑色となっています。
赤い理由---神社の鳥居
最初に断っておきますが、「神社の鳥居=赤色」ではありません。神社の総本山ともいうべき伊勢神宮の鳥居をはじめ、赤色ではない鳥居はたくさんあります。
ただ、そうは言っても「赤い鳥居」は私たちのイメージに強く残っています。その代表格は、外国人観光客に大人気の伏見稲荷大社(京都府)でしょう。
そこで、伏見稲荷大社のサイトを覗いてみると、赤い鳥居の理由が明確に述べられていました。
朱色は、魔力に対抗する色ともされていて、古代の宮殿や神社仏閣に多く用いられています。当社に限って云えば稲荷大神様のお力の豊穣を表す色と説明されています。
ただ、お稲荷さんだけが朱塗りではなく、朱塗りの神社は他にも多くあります。
また朱の原材料は水銀=丹です。これは昔から木材の防腐剤として使われてきました。
つまり、朱色(赤色)が魔力に対抗し、災厄を防ぐ色であること、神様のお力を高める効果が期待されること、そして現実的は建築資材に使用されている木材の防腐剤の役割を果たすこと、ということです。
赤色が魔力に対抗し、災厄を防ぐパワーを持つという考えは中国から伝来したようです。もともと赤は人の手では出せない色であり、それだけに特殊な力を秘めている考えられました。
古くから恐れられていた病気に、疱瘡(天然痘)がありますが、これは疱瘡神という神様の祟りだとされていました。
この疫病神は赤色を嫌がるという言い伝えがあり、疱瘡神を追っ払ったり、逆に疱瘡神にとりつかせたりするために、赤いだるまを飾ったりしていました。これが、だるまが赤い理由となっています。
赤い理由---広島カープ
プロ野球・広島カープといえば赤です。カープは「鯉」だから赤と思っていましたが違いました。また、球団創設時からずっと赤ではありませんでした。
初期のユニフォームは、ロゴや袖口、襟周りにこそ赤い縁取りがなされていましたが、帽子やアンダーシャツは紺色でした。まだ、チームカラーが赤とはいえませんでした。
本格的に赤が採用されたのは1975年、初優勝を果たした年です。日本球界初の外国人監督となったジョー・ルーツは、前年まで3年連続最下位だったチームの再建を託されました。
ルーツ監督がまず着手したのが帽子の色。燃える闘志を前面に出すべく、自らの古巣のクリーブランド・インディアンズのチームカラーだった赤を帽子とヘルメットの色に変えました。カープの代名詞となった「赤ヘル軍団」はここから生まれたわけです。
ただ、赤ヘル生みの親のルーツ監督は、開幕早々の4月に審判に暴行したことの責任をとって辞任しました。しかし、その後を受けてコーチから昇格した古葉竹識監督は「赤ヘル旋風」を巻き起こし、球団創設25年目にして初優勝を達成しました。
ちなみに、今の赤ヘルは親会社のマツダが製造しているアテンザの車体色と同じです。色の名前は「ソウルレッドプレミアムメタリック」。テレビで見ていても光沢のあるいい色だと感じていましたが、新開発の塗装技術とのことです。
赤い理由---サンタクロース
サンタクロースのモデルは、4世紀にミラ(現在のトルコ周辺)で活躍した聖ニコラスだとされています。
聖ニコラスは、恵まれない子どもたちや貧しい人々に施しをしていた司教でした。年の暮れ、ある家族が貧しさのあまり娘を売りに出そうとしていました。それを聞きつけた聖ニコラスは、その家の煙突に銀貨を投げ入れました。
銀貨は暖炉の下で乾かしていた靴下の中に入り、おかげで家族は娘を売りに出さなくてすみました。
このエピソードが、サンタクロースが靴下にプレゼントを入れるという伝説の元となりました。そもそも、サンタクロースというのは、聖ニコラス(セント・ニコラス)のオランダ語源(シンタ・クラース)でした。
そこで、サンタクロースの赤い色についてですが、カトリック教会では白装束に赤いガウンが司教の正式な衣装となっているところに由来します。
赤いガウンは、人々の幸せのために、自らの肉体や命を惜しむことなく活動していく司教として、流す血の色を示す覚悟の表れを示すものとされています。
そして、17世紀、アメリカに植民したオランダ人たちが「シンタクロース祭」を持ち込み、枕元に吊した靴下にプレゼントが入っているという風習と、赤い服を着たサンタクロース像がクリスマスのシンボルとして一般化していきました。
ちなみに、赤い服のサンタクロースのイメージを世界中に定着させたのは、炭酸飲料のコカ・コーラだという説があります。そういえば、コカ・コーラのイメージも赤です。
実際、コカ・コーラの公式サイトでは、サンタクロースとの関係を明確に述べています。
その昔、サンタクロースに対するイメージは、国や地域によって大きく異なっていたと言われていました。
その中で、1931年(昭和6年)にコカ・コーラ社がクリスマスキャンペーン用に、その当時コカ・コーラ社の広告アートを担当していたハッドン・サンドブロムに依頼して制作した広告によって、赤い服を着た、白髭で陽気な微笑を浮かべたサンタクロースが描かれました。
以降、コカ・コーラの世界進出に伴って、このサンタクロースのイメージもあわせて世界的に定着していったと言われています。
以上、『赤い理由-----郵便ポスト、神社の鳥居、広島カープ、サンタクロース』 でした。