森友・加計学園、防衛省日報問題、官僚のスキャンダルと大揺れに揺れる国会・永田町ですが、突如、衆議院解散の「解散風」が吹き荒れています。
昨年(2017年)10月に衆議院議員選挙をやったばかりで半年しかたっていませんので、「まゆつば」ものだと思っていましたが、どうやらそうでもなさそうです。
そこで、知り得た情報を駆使して、永田町に「解散風」が吹き荒れる4つの理由を紹介していきます。
《飯島勲・内閣官房参与の発言》
森友・加計学園、行政文書の改ざん、防衛省日報問題、官僚の女性スキャンダルなどで安倍内閣の支持率が下落するなか、永田町では突如、「解散風」が吹き荒れています。
そのなかで、特にクローズアップされたのが、小泉純一郎内閣で首相秘書官を経験し、現在は安倍政権の内閣官房参与を務める飯島勲氏の発言でした。
飯島氏はBSフジの番組『プライムニュース』において、選挙日程まであげて発言していました。
(衆院解散について)これはズバリ言うと、私から見たら「1日も早く」で、連休明けの5月7日の週に解散して、5月23日公示、6月3日投開票。これが一番早い。あとはゆったり考えても、6月11日解散、27日投開票。ここら辺を考えるべきだと。
(昨年10月に衆院選をしたばかりで、解散の大義はどこにあるのかと問われて)いや、それは関係ないっすよ。(1980年5月)大平正芳内閣で当時の社会党が内閣不信任案を出して(自民党非主流派の多数が衆院本会議を欠席して可決され)、選挙からたった7ヶ月で「ハプニング解散」という名称があったんですが、あれですよ。
飯島氏が解散の根拠にあげているのは、財務省の佐川宣寿・前理財局長が「記憶にない」を連発した証人喚問の評価を聞かれた安倍首相が、「どんな印象をもったかについては、国民の皆さまのご判断に任せたい」と述べたことです。
この首相発言を根拠に、飯島氏は「『国民のご判断に任せたい』とは、解散総選挙しかない」と断言しています。
首相およびその周辺が、政府批判の手を緩めない野党を揺さぶるために、もったいぶった理由をでっち上げて「解散風」を吹かせることはよくあります。
今回の飯島発言もその類のものだとする声もありますが、いろいろと話を聞いてみると、そうでもないらしいことがわかってきました。
総合すると、今、「解散風」が吹き荒れる理由は4つに集約することできます。
《理由① 自民党総裁選と東京五輪》
『○○の成功哲学』的な本では、なりたい自分をイメージし続けることの重要性が説かれます。現在の安倍首相のなりたい自分とは、ズバリ、2020年の東京オリンピックの開会式に日本国内閣総理大臣として出席することです。
東京オリンピックへの思い入れは、私たちの想像を超えていて、「オリンピックの開会式では・・・」と満面に笑みをたたえて語る安倍首相を何人もの議員が見ています。閣僚経験のあるベテラン議員は、「遠足を楽しみにしている小学生みたいだった」とも述べています。
ただ、安倍首相の自民党総裁としての任期は今年(2018年)9月までで、同月に総裁選挙となります。これをクリアしないと、首相の座を失うことになります。オリンピック開会式の夢が潰えてしまいます。
当初は、総裁選も「安倍1人勝ち」の様相だったのが、ここへきて不祥事が相次いだことにより、内閣支持率は著しく低下。毎日新聞の世論調査では、内閣の危険水域とされる20%台となりました。
こうなると、安倍首相ではなくて他の人を総裁・総理に選ぶべきだという雰囲気となってきます。実際、石破茂氏や岸田文雄氏、野田聖子氏らの言動が活発になってきました。
そこで、安倍首相の起死回生の一発が、衆議院の解散・総選挙というわけです。
9月の自民党総裁選の前に、衆院選を行い勝利すれば、「国民の信を得た」となります。「国民の信を得た」人を総裁選ですげ替えるわけにもいかず、難なく安倍氏が再選されるというストーリーです。
先に紹介した飯島勲・内閣官房参与もこう言い切っています。
私だったら、もう、今、解散しますね。100%。
今の状況を見ると最悪でも過半数は十分取れる。過半数以上の議席が獲得できれば、安倍内閣の持続が当り前。何ら問題ない。新たなるスタート
《理由② 安倍首相の党内掌握術の妙》
内閣支持率や党の支持率が高い間は、誰も何も言いません。例え、不満があろうとも、国民の支持を集めている以上、それを口にしても相手にもされません。
ただ、支持率が落ちてくると、(それには当然、理由があるわけですから)不平・不満の声が徐々に表に出てきます。それが激しくなると、党内抗争へと発展し、さらに支持率を下げるという悪循環に陥ります。
現在の自民党は、まだここまでの状況にはなっていませんが、支持率の低下傾向が続くようだと、この悪循環に陥るリスクが出てきます。
そうならないよう、リスク回避のための一発が、解散・総選挙というわけです。
安倍氏が首相に再登板して以降、5年間で2度、解散・総選挙をやっています。この小刻みな解散・総選挙で党内を掌握し、不満分子が出ないようにしてきました。
現在の衆議院の選挙制度は小選挙区制。自民党公認候補となることが絶対条件です。公認を得られるかどうかは、議員にとって死活問題となります。その死活問題である公認権を、総裁ー幹事長のラインが握っています。
選挙が終わって1年も経過すると、次の選挙を考え、ソワソワし始めるのが議員心理です。そこへ、何かあったら公認権をちらつかせ、時には恫喝し、そして実際に解散する。
こういうことを、この5年間で本当にやってきたのですから、総裁ー幹事長のラインには逆らったり、不平・不満を言えるはずがありません。まさに、安倍首相の「党内掌握術の妙」です。
支持率が低下し、また、これから東京オリンピックまでの間を見据えた時、今こそこの「党内掌握術の妙」の見せ場というわけです。
《理由③ 統一地方選挙と参議院議員選挙》
衆議院議員選挙において、各選挙区で集票マシンとしての役割を担うのは、都道府県議会議員と市町村議会議員の地方議員です。
この地方議員の選挙が全国一斉に来年(2019年)に行われます。地方議員にとっては、当然ながら自分が当選することが第一で、他人の選挙は二の次、三の次。自分の選挙が終わってしまったら、しばらくゆっくりさせほしいという心理状態となります。
逆に、衆議院議員選挙が地方議員の選挙の数ヶ月前にあると、地方議員は、自分の選挙準備と衆院選とを連動させた活動ができるというメリットが出てきます。
また、同じく来年7月には参議院議員選挙があります。これも地方議員と同様のことが言えるわけで、参院議員にとっても、今年中の解散・総選挙なら自分の選挙と連動できるメリットが生じてくるということです。
つまり、統一地方選と参議院選の前に解散・総選挙をやれば相乗効果が発揮されて、結果は有利に働くと判断されているということです。
《理由④ 整わない野党の選挙体制》
「解散・総選挙を行うベストなタイミングは?」の質問に対する、唯一の正解は「勝てる時」です。
選挙に勝てるかどうかは、戦う相手となる野党との力関係がどうかがポイントとなります。自分たちが、相手よりも有利な立場にいるかどうかです。
今は、戦う相手となる旧民主党・民進党の流れをくむ野党陣営が、立憲民主党、希望の党、民進党に3分裂したままとなっています。
ただ、ここへきて、もう一度再結集しようという動きがあります。おそらく、希望の党と民進党は1つの政党になると思われます。そしてもう少し時がたてば、立憲民主党とも一緒になるかもしれません。
つまり、安倍首相にとっては、時間が立てば野党陣営の選挙体制が構築されていく前に、解散に打って出たいとの誘惑にかられるわけです。
実際、昨年(2017年)10月の解散・総選挙も、野党陣営の共闘体制が出来上がる前にや行われ、希望の党への合流にしても議論が不十分だったために矛盾があちこちに噴出し、結果、野党側の自滅に終わり、自民党が漁夫の利を得た格好となっています。
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《まとめ》
今回の「解散風」について話を聞いてみると、口をそろえて返ってくるのは、①の東京オリンピックのことです。
東京オリンピックに並々ならぬ執念を燃やす安倍首相にとって、9月の自民党総裁選は何がなんでもクリアしなければなりません。
しかし、現状は赤信号がともっています。これを打破する一撃は・・・。
ストーリーとしてはよく出来ていると思いました。もちろん、そこには国民生活のことなど何も語られていないのですが。
以上、『突如、永田町に「解散風」が吹き荒れる4つの理由』でした。