どうやらウーマンラッシュアワーは本当に干されてしまったようです。『THE MANZAI』と『朝ナマ』が決定打となりました。
ただ、今は単独ライブも盛況ですし、今後はアメリカに渡ってビッグになる夢を語っています。
ウーマンラッシュアワーは初のアメリカからの逆輸入お笑い芸人になるかもしれません。
《干された理由は2つの番組》
年明けからウーマンラッシュアワーはテレビで見なくなりました。これは、ホントに干されたと断言していいでしょう。
何が理由で干されたのかですが、2つの番組が決定打となり、TV局のひんしゅくを買いました。
◆『THE MANZAI』
1つ目は、2017年末の『THE MANZAI』です。話題となった政治ネタの披露です。最後のくだりだけ紹介しておきます。
村本:現在、日本が抱えている問題は?
中川:被災地の復興問題
村本:あとは?
中川:原発問題
村本:あとは?
中川:沖縄の基地問題
村本:あとは?
中川:北朝鮮のミサイル問題
村本:でも、結局、ニュースになっているのは?
中川:議員の暴言
村本:あとは?
中川:芸能人の不倫
村本:それは本当に大事なニュースか?
中川:いや、表面的な問題
村本:でも、なぜ、それがニュースになるのか?
中川:数字が取れるから
村本:なぜ数字が取れる?
中川:それを見たい人がたくさんいるから
村本:だから本当に危機を感じないといけないのは?
中川:被災地の問題よりも
村本:原発問題よりも
中川:基地の問題よりも
村本:北朝鮮問題よりも
中川:国民の意識の低さ
(テレビカメラを指さして)
村本:お前らのことだー!
どぎつい政治批判に、現政権べったりの番組スポンサー企業が相当きつく怒ったといいます。これで、お正月特番などは軒並み呼ばれなくなっています。
◆『朝まで生テレビ』
2つ目は、2018年元日放送の『朝まで生テレビ』です。この回には、ウーマンラッシュアワーの村本大輔のほか、政治家、大学教授、ジャーナリストなどが出演し、田原総一朗氏の司会のもと、討論が進みました。
このなかで、最も反響を呼び、問題視された部分を抜粋して紹介します。
村本: (自衛隊が)違憲というのは、何が違憲なんですか?
井上東大教授: 君、9条2項の文章読んだことあるの?
村本: 読んだことないです。
田原: 読めよ!ちゃんと。
井上東大教授: 少し自分の無知を恥じなさい。
村本: (自分は)視聴者の代弁者だから、テレビはそうなんですよ。
村本: なぜ、攻撃されるんですか?なぜ、中国とか北朝鮮が日本を攻撃するという発想になるのかわからない。
田原: 米軍と自衛隊がなかったら、尖閣諸島は中国が取りに来る。取られていいわけね?
村本: 僕は取られてもいいです。明け渡します。
李龍谷大教授: じゃあ(中国が)「沖縄ください」と言ったらあげるんですか?
村本: もともと、でも中国から取ったんでしょ。
さすがに、「中国から取った」発言については、村本自身が認識不足を反省していましたが、スタジオ内はどよめいていました。
放送後、テレビ朝日には抗議の電話が殺到しました。『THE MANZAI』でスポンサー企業からにらまれ、今度は視聴者からもクレームが来たわけです。
これで、テレビ各局は、キャスティングの際の要注意人物(ブラックリスト)に村本の名前を入れたとのことです。
《政治ネタの評価》
2つの番組が干された理由となっていますが、もとはといえば、政治ネタを積極的に扱ったことがはじまりです。
タクシーの運転手が客に話しかける際、触れないようにする話題は、宗教、プロ野球、政治の3つです。
ウーマンラッシュアワーは客商売の人が避ける話題を前面に掲げたわけです。このことについては、同じお笑いの世界でも賛否両論です。
爆笑問題の太田光はこう言います。
(アメリカでよくやっている政治ネタは)簡単なんですよ。別に俺たちがとは言わないよ。ただね、政治風刺がいいって言うんだったらね、日本のお笑いの方がよっぽど多様性がありますよ。
もし政治ネタが見たければ、いっぱいいますよ、そんなのは。地下にいます。我々も若手の頃は放送禁止ライブだなんだって(やってましたが)、そんなヤツは(メジャーな舞台に)出て来れないです。笑えねえネタばっかだから。(TBSラジオ『JUNK爆笑問題カーボーイ』より
太田は、政治ネタがダメなのではなく、お笑いのレベルが低くなるからダメだと言っているようです。
でも、『THE MANZAI』では、「堅苦しいてつまらない」イメージの政治ネタを見事に料理し、話芸としてショーアップされていたと思うのですが・・・。
一方、関西お笑い界の重鎮、オール阪神巨人のオール巨人はこう高く評価しています。
原発などの社会問題に触れていたあのネタ、劇場などで何回か見ているんですが、僕はいいんじゃないかと思ってます。ネタとしての完成度も高かったし、沖縄や福井の人がいやな思いをしたというならともかく、基本的には弱者の立場に立って政治を皮肉るスタンスですから。本人も福井出身だし、いってみれば自虐ネタです。
これが、誰かを立ち直れないほど傷つけたらNGでしょうが、僕はあのネタが漫才のルールを逸脱しているとは思いません。
オール巨人は、政治ネタの善し悪しを超えて、純粋に漫才のネタとして完成度が高いという一般的な評価を下しているのです。政治ネタを扱っても、話芸としての漫才のレベルは高いということです。
《ウーマンラッシュアワーの「今」》
今、確かに干されています。確認できる範囲でいうと、定期的に出演するテレビ番組は、日本テレビ『AKBINGO』、福井テレビ『おかえりなさ~い』の2本のみ。深夜と地方ローカルです。
しかし、特に村本は意気盛ん。吉本興業には在籍していますので、劇場公演や単独ライブもしっかりとこなしています。
テレビに出れなくなって、ふさぎ込むような様子は皆無。単独ライブは盛況で、村本節も相変わらずです。
ライブ名がふるっています。題して『ウーマンラッシュアワーの村本大輔の最近の怒りをずっと聞いているだけの45分~定期的にここでガスを抜かないと犯罪とかするタイプの人間なので優しい心で包み込みに来て下さい~』
そして、次に向けてしっかりと構想を練っているようです。
《ウーマンラッシュアワーの「今後」》
村本: アメリカに行きます。もう。2年後くらいにアメリカに行って、舞台に立つっていう。言いたいことを言いに行くという。もうテレビに興味なくなったんですよ。なんか、ゴールデンとかでピンポーンとか押して、懐メロとか答えてる時間ないと、僕には。マイクの前で金持ちになりたいんですよ。
テリー伊藤: 相方どうすんの?
村本: 解散します。スタンダップコメディーやりたいんですよ。すべてのタブーを笑いにして、大金持ちになる!
(ニッポン放送『渡邊美樹5年後の夢を語ろう』より
この話をネタとして受け流しがちですが、どうやら真剣のようです。
村本はこれまでにも定期的にアメリカに渡っており、ちょっとしたライブハウスにも出演しています。アメリカでどんなネタをやっているのか(しかも英語!)、とても気になるところですが、村本はラジオでその一端を語っていましたので紹介しておきます。
向こうでちょっと有名な韓国人のコメディアンがいて、その人が「アジア人モテねえ」っていう自虐ネタをやっていた。白人の女からすると、白人の男、黒人の男、バイブレーター、アジア人の男の順だと言って笑ってたのがムカついて。
黒人の人は「黒人カッコイイ」って笑いを取るんだけど、アジア人は自虐で笑いを取るから、「アジア人カッコイイ」っていうネタを作った。
確かに日本人の股間は小さいと。ただ、トヨタとか日産の車を日本人は作っているんだ。日本人は手先がメチャクチャ器用なんだ。だからコレは11本目の指だ。指だと思うとデカイだろってやったら笑ってくれた。
in the worldのworldが本番まで誰にも伝わらなかったけど、舞台では奇跡的に通じてウケた。課題は山積みだけど楽しかった。
また、ロサンゼルスのコメディハウスで最新のコメディー・シーンの研究に努めています。準備は着々と進んでいるようです。
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《まとめ》
村本は、もともとストイックで、漫才を極めたいとの思いが強いです。多少、偏屈なところもありますが、向上心というか出世欲が強いだけに、本当にアメリカに行ってしまうと思います。
ブレイクし始める時は「ゲスキャラ」で売っていましたが、「ゲスキャラで売れるかなと思ったけど、そんなに売れるわけではないんだな」(村本)と思い、政治ネタに舵をきったのでしょう。
かつて、ビートたけしが漫才で売れて、映画に乗り出した際、マスコミは批判的でした。それが、監督作品が次々と世界的な賞を受賞していくと、「世界の北野」と持ち上げています。
今はテレビ界から干されていますが、ハリウッドで成功すれば、「世界の村本」として日本に逆輸入されるかもしれません。
その日は、案外、早いと思います。
以上、『干されたウーマンラッシュアワーの「今」と「今後」』でした。
*追記 しかし、相方の中川パラダイスはとんだとばっちりです。政治ネタについて、中川は「ホントはこういうネタやりたくない。相方に押し切られた」とぼやく日々だそうです。