【金足農業・吉田投手の881球】高校野球の球数制限は非現実的だ!

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猛暑の中、熱い戦いが繰り広げられた第100回全国高校野球選手権記念大会。予想外の決勝進出(失礼!)を果たした金足農業の快進撃で、大いに盛り上がりました。

 

その一方、秋田大会から1人で投げ抜いてきた金足農業・吉田投手は甲子園で881球を投じましたが、投げ過ぎだと問題となり、投手の球数制限を唱える声が高まってきています。

 

果たして、高校野球において球数制限を行うことは現実的なのでしょうか?

 

 

 

金足農業・吉田投手の881球

秋田県とは何のゆかりもない私ですが、金足農業の野球の虜になってしまいました。大阪桐蔭との決勝戦は、まさにテレビにかじりつくようにして観戦・応援していました。

 

ただ、頼みのエース・吉田君は明らかに前の試合とは違っていました。肩で息をするシーンも多く、表情も疲労困憊という感じ。自慢の直球をことごとく痛打される様はあまりにも痛々しくて見ていられませんでした。思わず、「吉田君、もういいよ。君は十分に頑張った」とこぼしてしまいました。

 

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出典:東洋経済online

 

吉田投手は甲子園での初戦から、決勝戦途中で交代するまで881球を投げきりました。甲子園の歴代の記録を見ても、2006年の斎藤佑樹の948球に次いで、第2位にランクされる多さです。

 

また、今年の大会では、ドラマチックな結果となった「済美vs星陵」の試合では、済美のエース山口投手が延長13回を1人で投げきり、184球で完投しました。

 

吉田投手の合計881球と並んで星陵・山口投手の1試合184球という球数の多さは、大会が終了した今となって、投手の「球数制限をするべき」と大きな議論となっています。

 

 

球数とケガとの因果関係

素人目に考えれば、短期間で800球を超える球数は多すぎで、肩や肘をケガするはずだとなります。

 

先にあげた表にもあるように、甲子園で700球以上投げた投手で、その後もプロ野球で活躍した人の少なさを見ると、この時に何らかの故障を抱えてしまったのかもしれないと思ってしまいます。

 

医療関係者は、球数とケガには明らかに因果関係があると強く主張します。そして、「球数制限すべし」と訴えます。

 

一方、野球経験者で、特に、投手経験のある人は、肩や肘を痛める最大の原因は投げ過ぎではなく、「正しい投げ方をマスターしていないから」と説きます。(PL学園OBの桑田真澄氏は除く)

 

どちらが正しいのかはわかりません。ただ言えることは、選手の身体を守るために球数を制限すべきという意見は一見して選手第一の考えのように思えますが、実は、球児たちの本音とは異なるのではないか、ということです。

 

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公立高校の絶対エース

私の母校は公立高校です。昨年、2年生投手のM君の才能が開花し、プロのスカウトも注目する投手へと成長しました。

 

昨年夏はM君の大活躍で甲子園出場を果たし、学校創設以来初めて1回戦を突破しました。今年、春の選抜大会にも選ばれ、これも学校創設初の1勝を果たしました。

 

そして、今夏、2年連続の甲子園出場をめざしましたが、M君の体調不良により3回戦で敗退しました。

 

試合後、M君は「野球は高校までと決めていた。だから、小学2年生から甲子園のマウンドで投げきりたい、高校野球を極めたいと身体がどうなろうと頑張るつもりでしたが・・・」と泣き崩れました。

 

チームメイトたちも「Mで負けのだから諦めがつく。Mには甲子園に2度も連れて行ってもらって感謝しかない」と口々にM君への感謝の言葉を口にしていました。

 

監督は「良くも悪くもMのチーム。Mに並ぶ投手を作れなかった自分の責任。でも、現状では・・・」と肩を落としていました。

 

母校の野球部は、大学進学後も野球を本格的に続ける意志を持つ選手は一握り。プロなどまだまだ夢の段階。とにかく、高校で燃え尽きたいと必死なのです。

 

こうした公立校ならではの現実があるなか、「はい、100球に達したので交代!」というのは、果たして球児側に立った考えなのでしょうか。

 

大阪桐蔭をはじめとする私立強豪校は超高校級の投手を数人抱えているので球数制限など影響は皆無でしょう。公立校は、金足農業・吉田君のように絶対エースに頼らざるを得ません。

 

吉田投手は秋田県予選でも150球を超える試合も少なくなく、これで100球とかの球数制限があれば、甲子園出場すら危うかったのではないかと思います。

 

 

球数制限よりも試合日程の改革が必要

だからといって、現状のまま何も変えなくても良いと言っているのではありません。大会前から猛暑対策が必要だとわかっていながら、何も策をとらなかった主催者の高野連にはあきれています。何せ、決勝戦の試合開始が暑い盛りの午後2時なのですから。

 

球数制限が非現実的(現場の実情と乖離していること、公立と私立で格差が生じること)である以上、試合日程の改革をするべきです。準々決勝と準決勝との間に休養日を設けながら、準決勝と決勝との間には設けないという理不尽さをどう理解すべきなのでしょうか。

 

勝ち進むにつれて過密となる日程をもっとゆるくしていき、適度な休養日を与えながら、できるだけベストなコンディションでプレーすることを可能とするべきです。

 

この点、ライターの松谷創一郞氏はかねてより具体的な提案を行っていて、とてもよく考えられた日程案となっています。

 

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この松谷案だと、投手は1試合投げた後はだいたい4日間の休養となりますので、体調はかなり回復されるものと思われます。

 

問題は、甲子園球場を高校野球に明け渡す阪神タイガースです。1ヶ月もの長期間、本拠地で試合できなことになりますが、大阪の京セラドームでも阪神主催試合ができますし、今や「死のロード」という言葉も「死語」になりつつありますから大丈夫でしょう。

 

追記 ドーム球場開催案

球数制限と並んで議論となっているのは、猛暑対策としてのドーム球場開催案です。確かに、ドーム球場だと選手も観客も快適に過ごすことができますし、雨の影響も受けません。

では、球児たちはどう感じているのでしょうか?『Number Web』で、あの「東スポ(東京スポーツ)」の記事をわかりやすくまとめていましたので紹介します。

 

「小さいころからの憧れなので、甲子園でやらないと意味がない。僕は実際に熱中症で倒れたこともありますけど、甲子園じゃないとやっぱりダメ。ベンチにクーラーは効いてますし、自己管理が大事だと思う」(全国制覇の経験もある強豪校の選手)

 

「県大会では熱中症は出なかったけど、足をつるのはもうどうしようもない。正直、ちょっと不安はあります。夏の甲子園でやるために練習してきたので別の球場になるのは反対だけど、ナイターはありかも。プロ野球みたいでかっこいいし、思い出にも残ると思う」(連日記録的な猛暑日が続いた北関東地区の選手)

 

 なかには「僕はこだわりはないです。西武ドームを“西武園”という名前に変えてやればいいじゃないですか」との珍回答も。

 

 《結局、選手50人の回答は「甲子園でやるべき」が47人。「球場にはこだわらない」が3人で「ドーム球場に変更すべき」は0人だった。実に「94%」という圧倒的な支持率で、甲子園での開催継続を望む声が多く聞かれた。》(東スポ)

 

やはり、ドーム球場開催案も球児の立場には立っていませんでした。 

 

おわりに

高校野球の改革案として、「ドーム球場での開催」「秋に開催」そして「球数制限」と声高に叫ばれています。

 

球児たちの身体を考えての大人の意見があって当然ですが、元はと言えば高校の部活動の話です。

 

理屈抜きで野球が大好きで、甲子園で野球がやりたい高校生。そして、甲子園を夢見て日夜練習に励む小・中学生。彼らが主役であることを忘れてはなりません。彼らの思いに添った現実的な改革を、大人が後押ししたいものです。

 

以上、『【金足農業・吉田投手の881球】高校野球の球数制限は非現実的だ!』でした。