甲子園球場の「ラッキーゾーン」復活は、野球の醍醐味を失わせる!

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ラッキーゾーンが設置された甲子園球場

 

プロ野球阪神タイガースの本拠地である甲子園球場にラッキーゾーンを復活させるプランがあるそうです。

 

日本で一番ホームランの出にくい球場と言われる甲子園ですので、ラッキーゾーンが復活されればホームラン数の増加は確実でしょう。

 

一方、ラッキーゾーンが設置されていた時代と撤去されて以降との両方を知る世代としては、撤去されてからの方が、本来の野球の醍醐味が味わえた気がしてなりません。

 

 

甲子園球場「ラッキーゾーン」復活プラン

阪神タイガースの本拠地である甲子園球場に「ラッキーゾーン」を復活させるプランがあることが明らかになりました。

 

甲子園球場の改修計画の1つとして阪神電鉄本社内で議論されており、実現すれば1991年に撤去されて以来の復活となります。

 

今の若い世代の人は、ラッキーゾーンを知らないかもしれません。これは、1947年に甲子園球場の今ある外野フェンスから約20m手前に人工的に金網状のフェンスを作り、打球がスタンドに入らなくてもこのフェンスを越えればホームランとしたのです。

 

スタンドに入らなくてもホームランになってラッキーということで「ラッキーゾーン」と名付けられました。

 

1947年に設置されたのも、今回復活させようとしているのも、狙いは同じ。ホームランが出やすいようにするためです。

 

福岡のヤフオク・ドームでラッキーゾーンと同じ目的の「ホームランテラス」が既に設置されていますし。千葉のZOZOマリンスタジアムでも設置される計画が発表されたことも影響しているのかもしれません。

 

 

ホームランの出にくい甲子園球場

甲子園球場のサイズは両翼が95m、中堅が118m。この数字だけだと他の球場と大差はありません。しかし、そもそも、球場の形が他とは大きく異なっています。

 

甲子園球場の形は「おにぎり形」と言われていて、外野部分が円形にはなっていません。左中間、右中間のふくらみが中堅と同じ118mと極端に深くなっています。

 

したがって、レフトの頭上を越すホームランでも、フェンスの高さを加味すれば125mの飛距離が必要とされています。ホームランが出やすいとされる東京ドームや横浜スタジアムとは、そもそも形が違うというわけです。

 

実際のデータを見れば、ラッキーゾーンが設置されていた最後の年の1991年には53本のホームランが出ましたが、撤去された翌92年には29本と半減しました。もちろん、チーム事情などと大きく関係しますが、ホームランが出にくい球場に戻ってしまったことは間違いありません。

 

球場建設当時の資料が残っていないので、「おにぎり形」になった理由はわかりませんが、大正時代から存在する甲子園球場ならではの特徴と言っていいでしょう。

 

ちなみに、球場とは直接は関係ありませんが、ライトからレフトに強く吹いている独特の「浜風」は、ライト方向の飛球を戻してしまうため、特に左打者にはホームランが出にくくなっています。

 

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ラッキーゾーンが設置さていた当時の甲子園球場

ラッキーゾーンがあった時代

甲子園球場にラッキーゾーンがあった時代のことはよく覚えています。

 

確かに、今と比べてホームランはよく出ていました。ホームラン数20本は普通の数字だったようか気がします。誰にでも打てたとまでは言いませんが、かなりハードルは低かったのではなかったでしょうか。

 

実際、阪神に来た新外国人選手がラッキーゾーンにポトリと落ちるホームランを打った際、インタビューで「打った瞬間、平凡な外野フライだと思った」と言っていたくらいですから。

 

また、左中間・右中間を20m近く狭くしているので、外野手の間を抜ける打球もすぐにラッキーゾーンのフェンスに到達してしまい、3塁打はめったにはお目にかかれませんでした。

 

さらに、阪神のエース投手だった小林繁氏(故人)は、こすったようなあたりがホームランになるとして、「甲子園では投手が育たない」と嘆いていたそうです。

 

 

野球の醍醐味

何に野球の醍醐味を感じるかは、人それぞれです。

 

外野手の間を打球がライナーで抜けていき、フェンスまで転々としていく。打者走者は一気に3塁を狙う。フェンスに跳ね返った打球を外野手が中継の内野手に矢のような送球をし、捕球した内野手も矢のような球を3塁へ。さあ、クロスプレー、アウトかセーフか?

 

私が感じる野球の醍醐味はこうしたシーンです。打者走者のベースランニングのスピードと、外野手と内野手の寸分の狂いと無駄のない中継プレーとの競い合いは、ハラハラドキドキ、ワクワクします。ラッキーゾーンができればこういうプレーは・・・。

 

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もちろん、ホームランは野球の華でもあり、それに魅力を感じる人が大勢いることでしょう。

 

私は、甲子園では銀傘のある内野席で観戦しますが、遠く外野スタンドを見やりながら「ホームランはあそこまで飛ばさないといけないのか」といつも思います。そして、「やっぱりプロは凄いなあ」とも。

 

プロが打つホームランは凄くないといけないのです。間違っても、「打った瞬間、平凡な外野フライと思った」打球や「こすったようなあたり」がホームランになってはいけないのです。

 

ラッキーゾーンが復活すれば、日本一に輝いた1985年のようにホームランが量産されると思う向きもあるかもしれません。しかし、よく思い起こして欲しいのは、バースにしろ掛布にしろ岡田にしろ、打ったホームランの8割方はラッキーゾーンをはるかに超えてスタンドに放り込んだということです。プロとして凄かったのです。

 

 

おわりに

甲子園球場はプロ野球だけでなく、高校野球の聖地としても長らくファンに愛されてきました。

甲子園球場に足を運び、グランドを一望すれば誰しもが「美しい」と感じます。黒土と緑の芝生の絶妙のコントラスト、伝統の雰囲気を感じます。

ラッキーゾーンは、その伝統の雰囲気を台無しにしてしまいます。

以上、『甲子園球場の「ラッキーゾーン」復活は、野球の醍醐味を失わせる!』でした。